【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
野坂昭如「マリリン・モンロー・ノー・リターン」
憲武●天気さんが、すこしのあいだベーシストを特集するということですので、僕は歌謡曲の特集にしてみたいと思います。主に昭和の時代の歌謡曲です。という訳で、野坂昭如「マリリン・モンロー・ノー・リターン」(1971年)。
憲武●ロックを感じますね。この曲は作詞、能吉利人、作曲、桜井順で、1971年の曲ですね。同名の小説(初出「別冊小説原題」1971年陽春号)もありますが、それとは関係ないかと思われます。作詞の能吉利人(イエスキリストではなく、ノーキリスト)は、「黒の舟唄」という曲も書いてますが、作曲の桜井順のペンネームです。
天気●詞も曲も同じ桜井順ってことですね。
憲武●桜井順はコマーシャルソングをたくさん書いた人です。能吉利人ってずっと誰なんだろう? と思ってたんです。長谷川きよしバージョンの「黒の舟唄」でその名を見ていたもので。
天気●調べてみると(Wikipedia)、 2021年9月25日没。SuicaのCMソングとかありますから、最近まで仕事をしてた人ですね。
憲武●Suicaもそうなんですか。古くはフジカラーの「♪お正月を写そう」とかそうです。この「マリリン・モンロー・ノー・リターン」まあ、変な歌ですよね。でもインパクトはすごくある。脳内でループしちゃう。「この世はもうじきおしまいだ」と歌われると、そうだねっていう気になっちゃう。
天気●末世思想とマリリン・モンローの組み合わせ。曲名は、帰らざる河(River of No Return・1954年)からでしょうか。
憲武●そうだと思います。モンローが甘くゆっくりと「No return, no return」とリフレインしますよね。「マリリン・モンロー・ノー・リターン」ですが、ところどころドキッとするところとか、快哉を叫びたくなるところはあって、「さよならさよならコカコーラ♪」ってところ、歌詞を見ると国家甲羅って書いてあります。
天気●歌詞、おもしろいですね。「霞たなびくすみだ川、あほうあほうと鳥は啼き、浮かぶ魚の目になみだ♪」とか。好き勝手な感じが痛快。
憲武●野坂昭如は、小説家の他にいろいろやった多才な人ですが、一時期歌手として活躍してましたね。
天気●国政選挙に出馬して落選、そののち当選、半年間だけだけど参議院議員もやってました。サングラスなどのルックスも相まって、「あの時代の人気作家」としてイコン性があった。この曲も、その線によくマッチしていました。
憲武●永六輔と小沢昭一と三人で、中年御三家として、武道館でコンサートを開いたこともありました。すでにみんな鬼籍に入ってしまいましたが。惜しい人たちです。日本はこれからどうなるんだ?っていう結びになっちゃう。
(最終回まで、あと737夜)
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