【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
アース・ウィンド・アンド・ファイアー「That's the Way of the World」
天気●あのね、すこしのあいだ、ベーシスト特集、というか、好きなベースを軸に、バンドや曲を取り上げていこうと思います。とりたてて理由はなくて、なんとなく思いついた。
憲武●なんとなく思いつくあたり、さすがです。秋冬ってベースギターが似合う季節だと思ってるんですよ。
天気●ベーシストというと、この何十年かですかね、派手なチョッパー、スラップ奏法が「ベースの華」みたいになってると思うんですが、それは取り上げません。あくまで低く太くを基本にバンドサウンドの底を支えるような……。まあ、いろいろ言うよりまず、行きましょう。シリーズ最初はヴァーダイン・ホワイト(Verdine White)。アース・ウィンド・アンド・ファイアーのベーシスト。死んじゃったモーリス・ホワイト(ボーカル)の弟です。前に憲武さんが取り上げたバンドですけどね。曲は、これまで別のところでも話している「That's the Way of the World」。日本ライブです。
天気●前々回、マウンテンのライブも歌に入るまで2分くらいかかってましたが、これも、Aメロまで2分強。ゆったり乗せてくれます。
憲武●聴いてる側の期待が、だんだん高まる感じ、あの瞬間好きなんですよ。モーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリーのファルセットボイス、過去のある一時期を強烈に思い出させてくれます。
天気●曲自体が、なんといっていいかわからないくらい好きなので、いつまでも聴いていられるんですが、ベース特集なので、通しで聴いてから2度目は、ベースラインだけ聴いていただきたい。太くて柔らかくて、それでいて芯のある、おいしい音です。
憲武●最初からずっと同じリズムをキープしてますね。
天気●メロディの動きはきわめて少ない。イントロからAメロ、サビに入っても、シンプルなラインを保持。サビの終わり頃に、ちょこっと高音に展開するくらい。抑制の効いた良いベースです。
憲武●ほとんどブンブンと低い音なんですが、時おりペキッとも聞こえる短い音も好きです。
天気●あと、この人は、ルックスですね。髪はワンレン、眼は切れ長、口元は志村喬タイプ。体型はベーシストに最適の犬塚弘タイプ。見た目からしてキュート、かつ、ただ者ではない。
憲武●犬塚弘タイプでしたか。体型とバランスよくベースが似合ってます。
天気●全体の歌唱・演奏のこともすこし言っておくと、このライブ、モーリス・ホワイトの語りっぽい前奏から、フィリップ・ベイリーとのデュエット(とくに2分40秒あたりから肩を組むとこ!)、ケレン味なさすぎるギターソロと、聞きどころ満載。ほんと、奇跡のようなライブアクトだと思ってるんですよ。
憲武●この時のお客さんは、いい思い出になりました。羨ましい。
天気●歌詞に興味のある人は、聴いたり調べたりしてください。究極にポジティブな内容みたいですよ。それでいいのだ(赤塚不二夫)的な。
(最終回まで、あと738夜)
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