2022-10-16

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】リトル・ウィリー・ジョン「Leave My Kitten Alone」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
リトル・ウィリー・ジョン「Leave My Kitten Alone」


憲武●猫が夜、布団に潜り込んでくる季節になりました。という訳で Little Willie John で「Leave My Kitten Alone」。

 

憲武●1959年の曲です。ここで歌われている仔猫は、無論女性のことで「俺の女に手をだしたら、お前の頭をぶん殴るぞ」っていう歌です。それにしてはミャウミャウ言ってるコーラスが可愛いんですけど。

天気●猫(仔猫)って、若い女性と関連づけられるんですね。トム・ジョーンズの「What's New Pussycat?」とか。邦題が「何かいいことないか、子猫ちゃん?」でした。犬は、そんなメタファーがない。不思議っちゃ不思議です。

憲武●リトル・ウィリー・ジョンはアメリカのR&B歌手として知られ、幾多のヒット曲を放ちましたが、口論が元で刺殺事件を起こし、1968年に30歳の若さで刑務所で亡くなってます。

天気●この人はぜんぜん知りませんでした。

憲武●そうでしたか。この人の楽曲は、ペギー・リー、フリートウッド・マック、ホワイトスネイク、マドンナなどにカバーされてますので、彼の名前を知らなくても曲を聴けば、わかるという方は多いかもしれません。

天気●「Fever」がそうなんですね。これはカヴァーのとっても多い有名曲です。

憲武●マドンナの「fever」のアレンジ好きなんです。この「Leave My Kitten Alone」も、エルヴィス・コステロ、ジミー・ペイジ、ビートルズなどにカバーされています。

天気●展開は忠実にブルース進行。ブレイクのタイミングなども典型的。キーだけ決めれば、その場でセッションできる。そんなところもカヴァーの多い理由かも。

憲武●ちょっとビートルズのカバー、聴いてみますか。リトル・ウィリー・ジョンの方は、やや暢気な雰囲気があるんですが、ビートルズの方は、ジョン・レノンの声がドスが効いていて凄みがあり、本当に許されない感じします。

天気●ううん、このビートルズ版は、聴いたことがあるような、ないような。

憲武●ビートルズは、この曲を「Beatles For Sale」というアルバム用に1964年8月のある夜に録音してます。で、この時同時に録音した「ミスター・ムーンライト」がアルバムに収録され、Leave My Kitten Aloneは長らく放置されてたんです。

天気●なるほど、そういう事情?

憲武●熱心なビートルズファンは、この曲をブートレッグで聴いて、この曲のよさを知ってました。で、90年代になってジョージ・マーティンがリミックスしたものを、「The Beatles Anthology 1」で初めて公式に聴けるようになりました。僕個人としては、こっちの曲が「Beatles For Sale」に収録されていた方がよかったと思います。アルバム全体に漂うちょっと暗くて疲れた感じが、緩和されたのではないかと。

天気●でも、ルート・ミュージックのR&Bから、幅広くポップスへ、というバンドの流れの節目にもなったアルバム「Beatles For Sale」ということからすると、「ミスター・ムーンライト」のほうがいいかもですね。

憲武●それはちょっと思います。まあその辺のバランスは当然考えてるでしょうね。当時はボーナストラックとかなかったですからね。途中からビートルズの話になってしまいまして、すみません。 

(最終回まで、あと739夜)

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