【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
マウンテン「Roll Over Beethoven」
天気●まあ、どこまでホントで、どのくらい眉唾かわからないんですが、最近の若者は、曲を聞くとき、ギター・ソロをスキップするという話を、最近よく聞きます。イントロも長いとダメ。聴いてもらいたいなら、すぐにキャッチーなメロディーが出てこないとダメらしい。
憲武●それは僕も聞いて、いや、ネットで読みました。まず一番美味しいところを食べたいんですね。
天気●ミュージシャンは悠長なことをしていられなくなった。というわけで、昔のロックの、ゆったり長い演奏を。マウンテンのライブで「Roll Over Beethoven」(1971年)です。
天気●マウンテンって当時はわりあい人気があったのですが、今ではほとんど名前を聞かない。存在感がなくなっちゃったバンドという感じです。70年代のロックバンドには、そういうケースが少なくないのですが。
憲武●結構ありますね。忘れられたロックバンド。マウンテンの名を知ったのは、「バニシング・ポイント」(1971年)っていう映画の挿入曲でです。
天気●チャック・ベリーが1956年に発表したロックンロール・スタンダードなんですが、この曲が始まるまで2分以上、イントロというかギターソロというか、なかなか始まらない。
憲武●ビートルズならすでに始まっていて、もう終わる寸前というところです。ビートルズの「ロール・オーバー・ベートーヴェン」は2分40秒くらいですから。
天気●で、やっとロックンロールのテンポで、派手なコード・プレイが始まる。ここは興奮します。長く待たされただけに。と思ったら、そのままワンコーラス、コードで回す。そのあとやっと歌です。
憲武●ロックはじれったい。
天気●その後も、ギターソロあり、ロックンロールでおなじみっぽいリフありで(ここはサディスティック・ミカ・バンドの名曲「タイムマシンにお願い」のイントロを思い出したりします)、結局、9分近く、ゆったり時間をとって懐深く、ノリノリ(死語です)のロックンロールを展開してくれます。
憲武●おなじみのフレーズ、盛りだくさんといった印象です。キャロルなんかも思い出します。いや、でも「ロック聴いたっ!」って感じになります。
天気●ロックバンドのライブはこうでなくっちゃあ、という感じで、気分がすっきりします。小洒落たポップスを、サブスクかなんかで、どんどん消費する、その気分もわかりますが、こういう野蛮なビートを大音量で愉しむというのも、アリだよなあ、と。
(最終回まで、あと740夜)
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