ベンゼン環 ハードエッジ
メリーゴーラウンド春光を紡ぎ出す
日めくりのまだ分厚くて春の雪
春雪の仮りそめに組む花筏
ひんがしの山の雪解け日本海
ふらここや靴を飛ばして足長き
春燈の消えて闇夜の影法師
何の菜か宿の菜飯の色違ひ
切先の鋭きを地に挿木かな
妻に子に我に臍あり万愚節
名札は胸に苗札は赤土に
古株に日の目を見せて根分かな
遠足の園児と聞けばそれだけで
復活のなき安らぎの涅槃像
蝶になる夢を忘れし蜆やも
辞書に並ぶ「ミサ」と「ミサイル」恋の猫
あくびなら子猫も負けてをらざりし
切つてあるハムやチーズや朝桜
ゴジラいま地球の味方花吹雪
花吹雪本気を出して来りけり
若草に厩出しといふ一大事
六月の朝の六時の空の青
右の頬に左の頬に梅雨の髯
片陰が道の右から左へと
シャワー「弱」さへ日焼の肩に噛み付きぬ
装束で買ひし麦酒のハズレかな
豆飯に莢豌豆のおみおつけ
羅を鋼仕立に甲羅かな
蛞蝓の百の重さの蟇
茄子、胡瓜、牛蒡、大蒜、萵苣も咲き
甘藍の外葉大いに反り返る
水たまり秋の欠片を浮べたる
爽やかに引きし補助線仮説成る
空缶に鉄やアルミや秋の風
天の川より一滴の耳かざり
かつかつ書くベンゼン環の夜学かな
休暇明け包帯の子がもう一人
菊の香に乾けば消ゆる水たまり
瓢箪になれず糸瓜のぶら下る
みしみしと土龍に響く霜柱
白狐撃たれて倒る白きまま
進むレジ進まぬレジや葱を手に
数へ日にドプラー効果あるやうな
年の瀬の火事場帰りの消防車
厨には油の跳ねし古暦
飛行機の操縦室の初御空
買初の銀座京橋日本晴
幼子の首筋寒き春著かな
雪山に取り囲まれて弓始
大寒の海の魚や食べごろの
ティアラして雪のディズニーランドかな
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