2022-12-25

第三回 ゴリラ読書会 十句選

第三回 ゴリラ読書会 十句選

画像をクリックすると大きくなります





小川楓子選

苔の羊歯の踏み心地なりノーヴェンバー  鶴巻直子

陽がどかんと懐へ仔牛の料理だ  鶴巻直子

乱雑な部屋にぽあーんと私空気  安藤波津子

紫木蓮円周率の自我すっくと  早瀬恵子

ガラスを抜けた小鳥抜け殻がきれい  安藤波津子

夜雨しきり部屋中にぬれた樹木が  猪鼻治男

君も同年なめくじの先の皮膚と肉  谷佳紀

満月や腹透きとおるまで画鋲うつ  早瀬恵子

パチと干すおしめ釈迦より明るいな  在気呂

兎の耳動きはじめて僕が近づく気配  久保田古丹


外山一機選

煙の中白色レグホンひるがえる  鶴巻直子

焼鳥の微光受信の母国語よ  谷佳紀

はればれと尻わかれゆく渚かな  原満三寿

こけし売り泡立つ海を後手に  安藤波津子

とある夜の空気しばしば左折する  荻原久美子

空家に帽子を濡している青空  久保田古丹

メガネ置きひとりのことを消せずいる  山口蛙鬼

石仏と海原いっしょに走り出す  早瀬恵子

青葉木菟遠く縫針行くごとし  在気呂

砂時計の刻絶え影につかまる兎  谷佳紀


中矢温選

緑園にくらげが来ているパラソル  久保田古丹

手のひらの砂ふりつづく家を買う  猪鼻治男

【韻律が気になる】

去年今年ヒロヒトヒロシマ墓地勃起  原満三寿

老人性感情失禁ああああ笑う  原満三寿

魚紋 ながすねひこのかちわたる  多賀芳子

マカロニ並列この夏の空っぽ  鶴巻直子

曇天ヴギウギ蟹も来たり  鶴巻直子

惜しみなく蝶に油の流れ  鶴巻直子

ひんやりと緋の非売品フラミンゴ  鶴巻直子

赤い釘ゆらりと「誰か居ませんか」  在気呂


三世川浩司選

鳥騒やひとりカルタひとり花骨牌  多賀芳子

偏西風にのって肉桂を嚙んで  中北綾子

遊女に夕陽は異教のブランコ  久保田古丹

白菖蒲あなたが咲いている九月の闇  久保田古丹

冬恍と河馬の脊中に縫目なし  鶴巻直子

走りすぎタイムトンネルの美のおかあさん  谷佳紀

夜はしずくで昼は椿に溶ける骨  谷佳紀

皿運ばれてゆく晩秋という部屋  久保田古丹

瓶に詰められた寒灯鳩の愛語  久保田古丹

マルコポーロの足踏何ぞ梨透けて  兼近久子


横井来季選

カナダの便りコスモスはくもる水  多賀芳子

砂漠立つ胃の腑のような映画館  多賀芳子

隣室に亡父がたまる弥生尽  多賀芳子

電球消して天体めく部屋のさすらい  山口蛙鬼

卵割る刹那北半球赤し  鶴巻直子

乱雑な部屋にぽあーんと私空気  安藤波津子

水匂う 見渡す限り積木の部屋  萩原久美子

笑顔ではないのだ蘭の花で埋めるな  多賀芳子

ピアノすでに脱水症状 怒ったよ  鶴巻直子

おとぎ話の左手は優しいはずだ  萩原久美子

0 comments: