【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ライ・クーダー「Big Bad Bill Is Sweet William Now」
天気●デヴィッド・リンドレーが3月3日に78歳で亡くなりました。以前に取り上げたので、ここでは追悼の意を表明するにとどめ、今回、デヴィッド・リンドレーがたびたび共演したライ・クーダーを。意外にも、まだ取り上げていなかったこともあって。
天気●数あるアルバムの中ででちょっと異色な「Jazz」(1978年)というアルバムの冒頭です。インストの多い、このアルバム、先週聴いたような「いかにもジャズ」というのは違って、時代的にはもっと古い感じ。ニューオリンズでのジャズ黎明期の雰囲気もたたえたアルバムです。
憲武●むかし六本木のデザイン事務所にいた頃、先輩がライ・クーダー好きで、CDをかけていたんですが、この「Jazz」もよく聴いてました。でもこの曲はちょっと覚えてなかったです。
天気●1924年に書かれた古い曲で、日本では言えば、その前年に関東大震災と浅草オペラ解散です。当時ですから、レコードじゃなくて、まず楽譜が売り出された。エメット・ミラーの録音(1929年)が今でも聴けます。ライ・クーダーのヴァージョンはこれに、まずまず忠実です。
憲武●そうですね。このエメット・ミラーの声が裏声になるヨーデルみたいな歌い方は、ジミー・ロジャーズと並んで、ハンク・ウィリアムスへ継承されてるような気がしてます。
天気●歌自体は物語歌(バラッド)と解していいのしょう、乱暴者だったビルが、結婚してすっかり良い人にになっちゃったといった歌詞です。ご存じのように、ウィリアムズの愛称がビル。
憲武●ちょっとビートルズの「ロッキー・ラクーン」を思い出してしまいました。
天気●ならず者の物語って多いですよね。でね、この曲が生まれてからたった100年前ともいえますが、この100年、ジャズは、音楽は、めまぐるしく変化した。私たちは、どえらい激動の100年の最後のあたりを生きているのかもしれませんね
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