2023-03-26

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】長谷川きよし「卒業」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
長谷川きよし「卒業」


憲武●季節柄今は、入学卒業のシーズンで、新宿駅を歩いていますと、つまり成人の日でもお正月でもないのに、着物姿の女のひとの二人連れ。なんかこう胸に迫るものがあります。という訳で長谷川きよし「卒業」。


 

憲武●長谷川きよしは653号でも一度取り上げられていますね。4年ぶりに再び取り上げてみました。この曲は、作詞・能吉利人、作曲・長谷川きよしです。「KIYOSHI HASEGAWA ALBUM FOUR(1971)」という4枚目のアルバムに収録されてます。前奏だけボサノバ風、全体の曲調はフォーク寄りのソフトロックというところでしょうか。

天気●ストリングスとフルートの感じが懐かしいです。

憲武●当時、フルートはよく使われていた印象あります。70年から74年くらいですか。アルバムのジャケットも、シングルのジャケットも、霞が関ビルを遠景に、早朝撮影されたもののようです。最初夕日なのかと思ってたんですが、シングル盤のジャケットを見ると若干日の位置が高くなってるんです。そして背景には車も人もないので、早朝かと思った次第です。いや、でも撮影の順が逆ってことも考えられますね。でも誰も通ってないから早朝でしょう。

天気●逆光。アルバムとシングル、同じ時間の撮影なんでしょうね。シングルのほうは、前からもそうとう光をあてて、違う仕上がりにしてる。

憲武●デイライトタイプの青っぽい照明を当てているんですかね。撮影場所はおそらく国会議事堂周辺でしょうか。1970年頃はまだまだのんびりした雰囲気でしたね。

天気●まだ、というか、70年安保の直後で、虚脱感のあった場所なんでしょう。

憲武●曲もさることながら、歌詞が、すごくいいんです。大人になることへの、ある種の感情、それも否定的な、を歌っていて、「さようなら  女の子」の歌い出しに引き込まれてしまいます。「嫌だなあ」の繰り返しも耳に残ります。

天気●甘い。今から思うと甘美でおセンチすぎるけど、当時の歌の世界では標準だったような気がします。

憲武●ノスタルジックな歌詞です。「KIYOSHI HASEGAWA Complete Singles」の平岡正明のライナーノーツによれば1972年にブラジル、スペイン、モロッコ、ギリシャ、インドネシア、アルゼンチンと旅行したそうですから、その土地土地の音楽を吸収して、長谷川きよし独自の音楽になっているんでしょう。

天気●この曲の発表が1971年ということですから、その後の海外歴訪ということですね。

憲武●そうですね。「灰色の瞳(1974)」という曲には、その辺の影響が出ているような気がします。最近はめっきりテレビやラジオには出ませんが、小さなライブ会場で、精力的な活動をしているようです。ライブを聴きに行きたい気分です。


(最終回まで、あと717夜)

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