2023-03-12

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】ウェイン・ショーター「Witch Hunt」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ウェイン・ショーター「Witch Hunt」


憲武●はい、ではウェイン・ショーター「Witch Hunt」です。


 

憲武●アルバム「Speak No Evil(1966)」の1曲めです。高一の時、友人に「これ、すごくいいよ」と勧められたのが「ネイティヴ・ダンサー」で、それからウェザーリポートも聴くようになるんですが、ウェイン・ショーターって、フュージョン、当時はクロス・オーバーと言ってましたが、の人だと思ってたんです。

天気●というか、クロスオーバー/フュージョンって、ジャズの一分野、一過性の(側面も大きい)変異でしょう?

憲武●変異ですね。変異なんですが、ジャズはジャズ、フュージョンはフュージョンとジャンルを分けたい気持ちはあります。で、その後だんだんジャズの人だとわかって、ジャズ・メッセンジャーズあたりから聴いてリーダー・アルバムへ、という流れですね。

天気●遡ったわけですね。

憲武●はい。編年体で聴いてみたいと思ったんです。「JuJu」、この「Speak No Evil」、「The All Seeing Eye」あたりは相当好きで、よく聴いてました。で、「Speak No Evil」なんですが、パーソネルがスゴいです。テナー・サックス、ウェイン・ショーター。トランペット、フレディ・ハバード。ピアノ、ハービー・ハンコック。ベース、ロン・カーター。ドラムス、エルヴィン・ジョーンズ。才能ある人には、才能ある人が集まるんですね。

天気●これぞジャズって音に思えますね、ジャズの門外漢なので。

憲武●このアルバムはテーマが魔界とか人外魔境なんでしょうか。魔女、死霊を扱った曲があります。そういうテーマはヘヴィ・メタルだけかと思ってましたが、ジャズでもやっていた、ということで驚いたアルバムです。

天気●タイトルとか、ことば的な部分は後付けかもと思ってますけどね。音楽が伝えるものは音楽だけ(どこかの作曲家が言ってた)。

憲武●なんかそれ、便利に使えそうな言葉ですね。絵画が伝えるものは絵画だけ。とか。「Witch Hunt」、魔女狩りってことですが、ダリオ・アルジェントの魔女三部作のように、おどろおどろしい雰囲気は皆無で、都会的でクールな印象です。ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、ハービー・ハンコックのソロの入り方が絶妙で、心地いいです。

天気●うん、いい感じですね。

憲武●2回目に聴く時は、ベースの音を中心に、って言う聴き方をしても、ロン・カーターは控えめに、時にさりげなく主張して、いいコントラストです。

天気●タイトで抑制的なフォービートですね。しぶい。

憲武●三月の春一番が吹いた日(2023年3月2日)に逝ってしまいましたが、まだまだ神秘的で謎に満ちた人で、常に魅力的であり続ける人だと思います。 


(最終回まで、あと719夜)

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