【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
西田佐知子「わたしだけの子守唄」
憲武●子守唄というと、小さい頃、母がよく歌ってくれたのは、モーツァルト、ブラームス、シューベルトの子守唄でしたね。日本のものはどういう訳か歌ってくれませんでした。佐山哲郎の「唱歌のふるさと 童謡のくに(JP文庫 2008年)」によれば、子どもの職業としての「子守」があり、歌われる子守唄には、歌う当人の辛さがあり、呪詛、怨みがつきまとうとあります。日本の子守唄には、淋しさ、悲しさが横溢していまして、母はそんな雰囲気が嫌だったのだろうと思います。この子守唄はどんな感じでしょうか。西田佐知子「わたしだけの子守唄」。
憲武●リリースは1961年7月です。作詞は蟻川茂男、作曲山下毅雄、編曲広瀬雅一です。作詞の蟻川茂男という人は、「七人の刑事」などのテレビのディレクター、プロデューサーをしていたようです。山下毅雄は「七人の刑事」を担当してますから、そのチームですね。
天気●テレビ由来の音楽スタッフというのは、当時よくあったんですかね。
憲武●んーー、どおでしょおーっ。この曲のA面が「刑事物語」というテレビドラマの主題歌でしたから、その関係なんでしょうか。この曲、たまたま手に入れた「西田佐知子 アーリー・デイズ」というCDに収録されてましたが、一聴、なんかこう、鬼気迫るものがあります。死んでも待ってますみたいな。そして深ーいフェイドアウト。退廃的なムードといい、独身男性は土曜日の夜なんかには聴けませんね。
天気●サキソフォンのイントロから、ビブラフォンやブラシのドラムなど、ジャズ味の強いアレンジですね。
憲武●ジャズ風味ですね。詞がいいんじゃないかと思います。歌詞カードには、歌詞の書いてない曲が何曲かあるんですけどこの曲もそうで、聴いて思い返すしかないですが、いきなり黒いアゲハが出てくるところはシビレます。
天気●歌唱と相まって、おどろおどろしい。
天気●その2つなんでしょうね、西田佐知子といえば。
憲武●いや、一番最初のヒットの「コーヒー・ルンバ」もあります。
天気●あ、そうだ。それを忘れてはいけません。
憲武●ちょっとハスキーな声って、魅力的ですね。あんまり高くないのもいいし。
天気●個性的で魅力的な声です。で、まあ、これは個人的な趣味ですが、きれい。ルックスも魅力でした。
憲武●関口宏と結婚したとき、僕はまだ小学生でしたが、心から嬉しいと思いました。「スター千一夜」という番組で、石坂浩二と関口宏が交代で司会をしていて、好印象を持っていたんです。その頃から西田佐知子って、僕の中ではルックス含めて、ちょっと別格って感じの歌手でしたんでね。バンザイって感じでしたね。
(最終回まで、あと673夜)
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