2024-03-17

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ラリー・カールトンとコリー・ウォン「Here To Stay」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ラリー・カールトンとコリー・ウォン「Here To Stay」


天気●ギターギターしたのが聴きたくなったので、コリー・ウォン(Cory Wong)とラリー・カールトン(Larry Carlton)、新旧のギタリストによる「Here To Stay」です。

 

天気●この曲、有名なのかスタンダードなのかわからなくて、調べもつきませんでした。きっと既存です。これ用につくったとは思えないので。ほんわかして良い曲。春らしくもあるし、何かが始まる感じもある。

憲武●なにかの番組なんでしょうかね。スタジオのセットっぽいです。曲にはある種80年代的ななつかしさを感じました。ラリー・カールトンはすっかりスキンヘッドですね。

天気●ラリー・カールトンは70年代からザ・クルセイダーズに参加。当時の、いわゆるクロスオーヴァーでいちばん名の知られたギタリストです。さらに有名にしたのは、ソロになってからの「Room 335」(1978年)。「335」は、この動画でも弾いてるギブソン社のセミアコースティックギター「ES-335」から取ったタイトルでしょう。

憲武●ああ、そうなんですね。借りてる部屋の番号かと思ってました。

天気●「Room」ですもんね。335は愛用のギター機種の名から、と信じきってました。

憲武●あのアルバム(Room 335)は聴き倒した覚えがあります。

天気●一方、コリー・ウォンは、このコーナーで以前に取り上げたヴォルフペックで、目立たないギターを弾いてました。とても巧みにリズムを刻むギタリストです。

憲武●出ていたんですね。すでに。

天気●新旧と言いましたが、音色やプレイも対照的で、ラリー・カールトンはES-335、コリー・ウォンはストラトキャスター。ギター小僧のような話になりますが、ボディが前者はホローボディ、中が空洞で、木の箱みたいなもの。後者はソリッド。木をくり抜いたり張り合わせた構造。それから、ピックアップと言って弦の音を拾う磁石の箇所が、前者はハムバッカー、後者はシングルコイル。音色が違います。

憲武●そうなんです。ずいぶん違うなあと思って聴いてたんですが、構造の違いなんですね。

天気●得意な、というか、みんなが聴きたいプレイスタイルも、コリー・ウォンはバッキング、ラリー・カールトンはメロディー弾き。そうした対照が良い具合に組み合わさって、とてもハッピーな演奏になったのだと思います。

憲武●途中、コリー・ウォンが演奏やめて聴き惚れるみたいな感じのところ、ありますよね。

天気●そうそう、憧れのラリー・カールトンと、「いまいっしょに演ってるんだ!」といった喜びが伝わります。

憲武●やはりレジェンドなんだなって思います。

天気●ああ、音楽って良いな、と常に思うのですが、なぜ良いかというと、ことば(歌詞)があってもいいのですが、なくても素晴らしい。俳句の近くにいて、ことばに飽き飽きすることが多いのですが、そんなときに救ってくれるのが、音楽です。サンキュー! って感じです。 


(最終回まで、あと670夜)

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