2024-05-19

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】 チューリップ「ヘイ・ジュード」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
チューリップ「ヘイ・ジュード」


憲武●天気さんが1年くらい前ですか、ビートルズのカバーを取り上げていましたので、
僕もいつかは、と思っていました。という訳でビートルズのカバーをこれから何曲か、こちらで取り上げてみたいと思います。チューリップ「ヘイ・ジュード」。

 

憲武●この曲はチューリップがビートルズをカバーしたアルバム「ALL BECAUSE OF YOU GUYS(1976)」に収録されてます。ジャケットが当時の少年マガジンっぽいですね。

天気●当時のフォーク、フォーク・ロックには、こういうノリがありましたな。

憲武●遊んでますね。カバーはビートルズフォロワーらしく、こうでなきゃって思わせるような、抑えるところは抑えていて、嬉しい限りです。声の張り方とか、コーラスの感じとかですね。

天気●ううーん、これは、人それぞれの考え方ですが、これだけアレンジが似ていると(ほぼ同じだと)、カヴァーではなくて、コピーとかカラオケ。あくまで私の感じ方ですが、これなら、本家・オリジナルを聴いたほうがいい。

憲武●カバー曲でそう思わせるアーティストもいます。カバーとコピーとの違いについては、人それぞれですね。意味は同じようなものです。

天気●いや、ぜんぜん違うでしょ? カバーは既存の楽曲をパフォーマンスする。コピーは演奏を(程度の差こそあれ)なぞる。コピーに近いカバーもあるにはありますけどね。「人それぞれ」というのは、コピーを商品として提供するのを、良しとするかどうか、というところが言いたかったのです。

憲武●なるほど。ちょっこし調べてみました。英語の意味は、coverは「他の歌手によってすでに歌われている曲を新たに録音する。copyは曲(フレーズ)をそっくりそのまま演奏することとありました。似たような感じですが、ニュアンスが異なりますね。

天気●そのコピーの説明はちょっと違う。曲(フレーズ)というと歌の主旋律だけのように聴こえますが、そうじゃなくて、このチューリップのもそうですが、伴奏楽器の演奏をそのままに近いかたちでなぞる、というのが、コピー。ピアノはもちろん、詳しくは聴いていませんが、ドラミングも同じ。

憲武●この「そっくりそのまま」をどう聴くかということだと思います。

天気●そうです、そうです。チューリップのこれは、ちょっと恥ずかしい感じがする。なに、カラオケ、やってんの? という。

憲武●ははあ、カラオケかあ。僕は聴いてみて、そのコピーがグッとくる感じでしたらOKですね。

天気●そう。そこが、人それぞれ。

憲武●で、チューリップのヘイ・ジュードですが、後半、唐突に「なんだよおまえ」って入ってくるのが、意味不明なんですけど、ああ、わかるわかるって納得できます。原曲のカオスな感じをうまく出していると思います。

天気●こういうオフザケみたいなのも、当時のフォーク、フォーク・ロック的なノリとして、よくありましたね。

憲武●ありましたねえ。後半のコーラスの「ラーラーラ、ラララッラー」の部分って、「心の旅」の「ああ、だから」という冒頭にそっくりですよね。「心の旅」が流行っていた当時は気がつかなかったんですが。財津和夫はたぶん意識的に引用してますね。

天気●チューリップ自体がね。「魔法の黄色い靴」(1972)がラジオから流れたとき、「おっ! ビートルズ!」と思いましたもん。洒落てて、ちょっと衝撃でした。

憲武●はい。あれは完全にビートルズです。5月はなぜか「ヘイ・ジュード」がピッタリすると思っていて、シングルの発売が5月だからだと思ってましたが、ググってみると8月の発売だったんですね。意外でした。 


(最終回まで、あと661夜)

0 comments: