【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
小山ルミ「Please Please Me」
憲武●ビートルズのカヴァー特集第三弾です。小山ルミ「PLEASE PLEASE ME」。
憲武●小山ルミのアルバム「小山ルミ ビートルズを歌う(1973)」に収録されています。訳詩は千家和也です。作詞家で、麻丘めぐみ、山口百恵の作詞でよく知られてると思います。内山田洋とクール・ファイブの「そして、神戸」もそうですね。あと三好英司の「雨」ですか。それにしてもすごいですね。この訳。「何をされてもいい」。この部分、なんかこう、山口百恵の「青い果実」を思い出します。
天気●その路線の作詞家ですよね。
憲武●はい。小山ルミという人、子供心に好きでしたね。きれいなお姉さんって感じで。「巨泉・前武ゲバゲバ90分!」に出ていて、よく観てました。
天気●イメージとしては、ゴーゴーガール、って言っても今の人にはわかんないでしょうけど、そんな感じ。
憲武●この曲を聴いてますと、なんかこう、楽曲の素晴らしさを再認識させられますね。ベンチャーズが渚ゆう子に曲を書いたような感じで、ビートルズが小山ルミに曲を書いて、千家和也が詞をつけた、と空想してみるとぴったりくる感じします。
天気●微妙に安っちい感じ、いい意味で。
憲武●そうなんです。チープだけど、それがいい。ビートルズを日本語で歌う試みは松岡計井子という人がやってまして、この人が先鞭をつけたんじゃないかと思います。中学生の頃、「MY詩集」という雑誌を読んでまして、松岡計井子の日本語版のビートルズの詞が載ってるのを読むと、なんかこう、ピンと来ない訳です。啓蒙的で。ビートルズ的な何かが欠けてるんですよね。松岡計井子も「プリーズ・プリーズ・ミー」を歌っています。
天気●つまり、ロックの不良っぽさがないってことかも。こういう曲を高らかに歌っちゃうとねえ。その点、小山ルミのカヴァーは、悪さしている感じがある。校則を守る・守らないの違いというか。
憲武●微妙なところなんですけどね。無理だとわかってても、やってみたくなる心理ってなんでしょうね。まあ、小山ルミは企画があったから、それに乗せられたってことでしょうけど、松岡計井子は自覚的にやってますけど、わかるんですよね。「この人、ビートルズ、あまり聴いてないな」というのが。
天気●「ビートルズを歌う」という企画は、当時、セールスのベースが確保できたのでしょう。ジャズの人にも多いし、R&Bでは、ブッカーTとMG'sにもインスト・カヴァー集があります。
憲武●欲しくなるようなジャケットですね。6月18日でポール・マッカートニーは82歳になりますが、今秋から再び「ゲット・バック・ツアー」を開始するようです。来年は日本にも来てくれるでしょうか。
(最終回まで、あと657夜)
0 comments:
コメントを投稿