2024-09-29

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】大貫妙子「くすりをたくさん」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
大貫妙子「くすりをたくさん」


天気●前号のゆらゆら帝国の「狂気」つながりで、大貫妙子「くすりをたくさん」(1977年)です。

 

天気●この歌詞、掛け合いになってるんですが、医者にかかったら薬が大量に処方される、そのことを皮肉った歌詞と解する向きも多い。でも、そうすると、冒頭の「狂ってるのは君だけじゃない♪」がちょっとひっかかる。

憲武●最初聴いた時(1983年頃)は、薬物関係の歌詞かと一瞬思いましたが、よく聴いてみるとそうではない。「狂ってる」というフレーズはまっとうな薬の処方とはちょっと遠く思えます。

天気●ドープ、ドラッグ関連にも思えてくる。ふた通りの解釈が考えられて、そうすると、「熱が出たら流行の病気♪」とか「もうすぐあなたは天国よ♪」の部分など、どっちでとるかで、おもむきが変わってきます。「こんなにたくさん飲んだら終わり♪」も、何が終わるのか、がらっと変わってくる。

憲武●「天国」は「地獄」を連想させますから、やはりdope関連なのかなと。4連めあたりまでは、その線で聴けますね。5連めで「ああ、処方薬のことか」とわかる。

天気●どちらにもとれるように作ってあるんでしょうね。音のほうは、当時20代なかばの坂本龍一がアレンジで、ブラジリアン・テイストたっぷりに軽快(パーカッションとフルートの効果絶大)。

憲武●この頃は無名の坂本龍一ですね。一人のスタジオミュージシャン。このアレンジはのちの「サマー・ナーヴス(1979)」に繋がってきますね。

天気●ギター大村憲司、ベース細野晴臣など、達者な演奏。ドラムのクリス・パーカーは70年代に米国のフュージョン系、ソウル系のアルバムでよく名前を見た人で、「スタッフ」でスティーヴ・ガッドとともにドラムを演った人です。

憲武●そういった意味でも注目されたアルバムかと思います。この曲の入ったアルバム「SUNSHOWER(1977)」は近年、シティポップの代表的なアルバムとしてアジア諸国でも有名なアルバムになりました。

天気●ゆらゆら帝国のような、ゆらゆら、べとべとした狂気とは対照的に、アーバン(微笑)でさらっとした狂気。どっちも愉しい。 

(最終回まで、あと642夜)

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