【週俳1月の俳句を読む】
意識の連続
暮田真名「芋づる式」を読む
清水かおり
「芋づる式」というタイトルを読んだとき、自動書記のイメージが湧いた。
表現したいこと、欲動へのアプローチを言葉にすることに長けている、と作者を想像しながら作品を読む。そもそも「芋づる式」は既存のものを辿る意味合いもあり、自動書記の次々と進んでいく(書かされる感覚)創作形態とは違うのだが、意識の連続が似たような状況を作り出すのかもしれない。
日替わりで家族の顔が点滅す
隠された上履きだから言えること
重箱に意中の人がいないんだ
モテ期かどうか相撲できめる
白衣では伝わることも伝わらない
悪意があればチュウしたものを
濡れた手で就業規則さわっちゃった
物陰で前撮りしたよなつかしい
子猫ちゃんたち地鳴りはやめて
ネーミングセンス光って、帰らなきゃ
日々、点滅するいろんな家族の顔にストーリーがひもづけされている。
隠された上履きは、その時の手指の荒れや季節の状況を克明に語ることができる。
重箱ってものをうやうやしく差し出す社会への軽いイロニー。
モテている感覚、賛同される感覚、一体感は相撲してみないとわからない。
きれいな白衣は脱ぐまできれいだし。
善意の第三者には手が出せない。
紙媒体の就業規則は水気に弱いって事実もある。
物陰はどこにでもあって、みんなが知っていたけど、自分達だけが持っていた。
解明されていない猫ちゃんたちのゴロゴロに囲まれてちょっとしたストレスもあるけど。
「芋づる式」は手段として、見えてくるものがある。
ライトヴァースな暮田作品に触れ、自分の感覚を確認する作業が楽しかった。
作品は書いた人のものだけれど、解釈は読む人のものだとあらためて思う。砕氷船『詩IA(しいちえー)』誌に「川柳は評価軸が定まっていない」という暮田の言葉があった。それゆえに活躍の多様性が注目され、ようやく、どの角度から提出しても川柳は川柳としての矜持を持っているという周知を得たように思う。
■西生ゆかり 室内楽 10句 ≫読む 第926号 2025年1月19日
■知念ひなた 風の街を住む 20句 ≫読む 第926号 2025年1月19日
■暮田真名 芋づる式 10句 ≫読む 第927号 2025年1月26日
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