【週俳1月の俳句を読む】
色・ホワイトブレンド
栗山 心
かつて、化粧品のキャンペーンソングが一斉にヒットチャートを賑わせた時期があった。主に、春の新作口紅のCMで、それらのCM を見ては、冬のややダークな色調の口紅から、淡い色の春らしい口紅に変えなくては、と思わされるのだった。色の感覚は、実際の季節より、少し早くやってくるのかもしれない。
春隣チョークの粉の淡き色 小野あらた
最近の学校では、黒板ではなくホワイトボードや電子黒板が使われていることも多いようだ。かつては授業後に黒板消しをパンパンやって、粉だらけになったりもしたが、最近のチョークは、貝殻や卵の殻で出来ていて、粉飛びも少ないそうだ。今やノスタルジックな風景となった、この句のチョークの粉は淡い色。ピンクや黄色、ブルーや薄い茶色のチョークが使われるのは、授業というより、お楽しみ会のような行事かも。子供たちが好き勝手に書いた、イラストや文字が、黒板いっぱいに書かれて、春が近い、学年末のどことなく緩い空気が感じられる。
差し色の赤の突出風邪心地 玉田憲子
こちらは赤。真紅だろうか。シックな服装にメリハリを付けるために身に付けた赤が、強烈過ぎて、浮きあがってしまっている。風邪気味で、ふわふわとした気分の時には、なおさら赤が、目に刺激的に感じたりすることもある。この差し色を身につけているのが自分なら、一日、少し落ち着かない気分で過ごすことになるだろう。
ビリビリと音して開く寒牡丹 川名将義
白か赤か、ピンク色か。牡丹が開く瞬間を見たことは無いが、もし音がするとしたら、あの少しギザギザとした大ぶりな花びらは、「ビリビリ」と開くことだろう。寒牡丹は、色味の少ない冬の風景の中では、驚くべき美しさを誇るが、そのはっとする感じを、音で見せることに成功している。
■新年詠 2014 ≫読む
第352号2014年1月19日
■佐怒賀正美 去年今年 10句 ≫読む
■川名将義 一枚の氷 10句 ≫読む
■小野あらた 戸袋 10句 ≫読む
第353号2014年1月26日
■玉田憲子 赤の突出 10句 ≫読む
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