【週俳4月の俳句を読む】
淡過ぎるような、それでいいような
小久保佳世子
土よりもすこしあかるく雉歩む 川嶋一美
雌(多分)の雉も土も本来あかるいとは言えない。他にもっと明るいものがありそう。それを敢えて土と比べ雉はあかるいと言いたい作者の微妙なまなざしを感じる。
一片のはなびら明日切る髪に 近恵
はなびらと髪は古来からの情緒に塗れた組み合わせだろう。それを「明日切る」と言う。ひとつの常套を断ち切るように。
少し渦巻いて大きな春の川 西村麒麟
川幅を示す二本の線。そのなかにバカボンの頬の渦巻きのようなものが薄く描かれている。淡過ぎるような何も言っていないような。
でも「それでいいのだ!」と言われているような。
花吹雪から卵焼き守りけり 野口る理
お花見弁当の風習が生まれた頃から、人々はずっとこんな経験をしてきたに違いない。でも、こんなことを詠んだ人はいたのだろうか。
健全なポインセチアと暮れにけり 曾根毅
元気なポインセチア。それと共に夕暮れを過ごす作者は癒されてているのか。それとも疎ましく思っているのか。
夏の夜の鏡に少年二人おり 山本たくや
実際より水鏡に映った景色のほうが美しいと思うことがある。この句の少年二人も鏡の国でこそ絵になる。肉体を持たぬ二人のようで。
音響に設計図あり八重桜 刈谷賢一
音響設計の分野は全くわからない。でも八重桜の季語によって自然現象も設計図通りのような気がしてくる。囀りの樹となった八重桜のイメージ。
さくらさくら散りゆきサックスの中へ 木田智美
さくらはどこにでも散ってゆく。この句のさくらはたまたまサックスの中へ散っていった。もし、さくらをたっぷり吸い込んだサックスを吹いたらどんな音がするのだろう。
その部屋の匂いとなりて春の宵 山下舞子
部屋の匂いに違和感のあった頃から時が過ぎて、今は部屋の匂いに同化している。それは諦めとも安らぎとも。
第363号 2014年4月6日
■川嶋一美 あゆむ 10句 ≫読む
■近 恵 桜さよなら 10句 ≫読む
第364号 2014年4月13日
■西村麒麟 栃木 10句 ≫読む
■野口る理 四月10句 ≫読む
第365号 2014年4月20日
■曾根 毅 陰陽 10句 ≫読む
第366号 2014年4月27日 ふらここ・まるごとプロデュース号
■山本たくや 少年 10句 ≫読む
■仮屋賢一 手紙 10句 ≫読む
■木田智美 さくら、散策 10句 ≫読む
■山下舞子 桜 10句 ≫読む
●
2014-05-04
【週俳4月の俳句を読む】淡過ぎるような、それでいいような 小久保佳世子
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿