【週俳11月の俳句を読む】
新しい眺め
西原天気
屋上の最前線に秋の空 中田美子
屋上から見える秋の空。事象としてはただそれだけのシンプルかつ当然。ところが、「最前線」と言われると、屋上の端に立つ人の視線の方向へと、屋上ごと、ビルごと、突き進んでいくかのような動きがあらわれ、秋空の開放感・爽快感もひとしお。
ひおもてをくしやみの粒のながれゆく 大塚凱
くしゃみの飛沫は唾液が成分だろうし、風邪のウイルスも混じっていそう。それをこんなにも美しく、太陽光のなかできらきらと輝きながら流れていく飛沫として描く。「ひなた」ではなく「ひおもて」と(音数の関係ではあるものの)記すことで、さらに美しく、ちょっと浮世離れした眺めともなった。
屋上から見える秋の空。事象としてはただそれだけのシンプルかつ当然。ところが、「最前線」と言われると、屋上の端に立つ人の視線の方向へと、屋上ごと、ビルごと、突き進んでいくかのような動きがあらわれ、秋空の開放感・爽快感もひとしお。
ひおもてをくしやみの粒のながれゆく 大塚凱
くしゃみの飛沫は唾液が成分だろうし、風邪のウイルスも混じっていそう。それをこんなにも美しく、太陽光のなかできらきらと輝きながら流れていく飛沫として描く。「ひなた」ではなく「ひおもて」と(音数の関係ではあるものの)記すことで、さらに美しく、ちょっと浮世離れした眺めともなった。
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俳句はときどき、既存のこと・もう知っているはずのことの一部を、あるいは全体をうっすらと更新してくれる。それは、未知がまだ残されているとの希望を、私たち読者に信じさせてくれるということだろう(ちょっと大げさに言えば、だが)。
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