20. ハードエッジ プランA「御国の宝」
啓蟄の首都に乗換案内図
吹かば吹け春一番の空の旅
特急と疎遠な村の日永宿
春昼の時報きこゆる港町
あまたある星のひとつが囀るよ
蝶が舞ふパンもケーキも無き寺に
口中に千金の泥つばくらめ
つばくらや雨ふる国の深庇
つかみ難しよ落るナイフも燕も
春雷にグラスを磨く女かな
がさごそと浅蜊のたうつ煮立ちかな
幼子は御国の宝桜咲く
熱飯に卵を落す朝桜
洗桶と洗濯籠と朝桜
村々の小学校の桜かな
山奥に海を知らざる山桜
山に山桜水力発電所
花衣母の衣桁も持ち出して
すたこらと花見弁当届けに来
ボンネット開けて桜を見せてやる
超然と歳月に立つ桜かな
ひとひらが落花の封を切らんとす
直列に並列に花吹雪かな
花ふぶき赤子は永久に泣き止まず
女房も一つ年取る桜かな
玉砂利の上に花見の忘れ物
蓋あけて天丼匂ふ花の雨
花の雨も滑りに来たれ滑り台
下水へと真つ逆さまや花の雨
咲き満ちて月にまみゆる桜かな
花疲れ回送電車通りけり
ざあざあと夏も近づくマンホール
モノクロのカラーの黴の声聞かな
眩しさの裸電球夏祭
金魚にするか花火にするか子の浴衣
浴衣着て母校に集ふ花火の夜
宿浴衣見よとばかりに干し連ね
古浴衣古き命を包むなり
蝉の穴地中より掘り来りけり
鱗粉の幽かな汚れ捕虫網
朗報の蟻か一目散に駆く
蟻の道お天道様が見てをられ
蟻でなきものを担ぎて蟻の列
夕立の天に捧げる観覧車
行く声と来る声秋の電話線
夕方は昼間の終り秋の暮
覗き見る点検孔の夜長かな
寒林の真ん中にゐる寒さかな
きゆつと鳴く踏んで幼き霜柱
初夢に初恋の人こんにちは
プロフィール:
積らせて落選展の落葉かな ハードエッジ
twitter専業俳人
葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人
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