【週俳1月2月の俳句を読む】
つながり合って
小林かんな
押し花のさいごの呼吸しぐれゆく 佐々木紺
押して、花の息を止める。その直前まで、息をしていたのに。そのように感じたことはなかったと気づく。美を永くとどめるために、その命を断つ。人間のエゴなどと言うのも大げさなほど、ささやかな営為だ。世界は冬に入り、つかのま時雨れる。
うつしよのあかるさばかり紙雛 同
下五で切らず、「あかるさばかりの紙雛」、と読んだ。 現世には明暗があり、禍福があり、浮沈がある。雛人形でも、立体のお雛様は奥行きを持ち、陰影も湛えやすい。それに対して、厚みを排した紙雛には影がない。「あ」音の繰り返しで、響きも明るさを引き立てる。
ぜんぶ空耳 蝶がうたつてゐるときの 同
「蝶がうたつてゐる」時間の繊細さ、異常さを思う。
陽炎や老人になる息子たち 同
息子世代が老人になるという時間の射程を思う。長生きの到達点として老人になるのだから、寿ぎととるべきか。とはいえ、何かしら影を感じるのは陽炎のせいだろうか。
作品をひととおり読んでから、題を見て、驚く。そんな句だったかと、慌てて作品へ戻る。一見、それらしい句はない。だからこそ、題を踏まえて読むと、10句がつながり合って、違う様相を帯びる。たとえば、虐げられた人の声を思う。さらに、一字空け俳句は読むことがあるけれど、一行空けとは力技。どう読んだか誰彼に聞きたくなった。
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