2025-12-28

【2025年週俳のオススメ記事 10-12月】 大遅刻おわびします 上田信治

【2025年週俳のオススメ記事 10-12月】

大遅刻おわびします

上田信治

 

 

第963号(2025年10月5日)の、池田宏陸さんによる「大塚凱句集『或』批評会・特別対談レポート/作品の『内』と『外』の対話」は、なかなかの問題作。じっさいに行われた西村麒麟、生駒大祐、中矢温、阪西敦子、鳥居真里子、青本瑞季、田島健一、西生ゆかりがパネリストとなった批評会とは無関係に、AI(Gemini 2.5 Pro)によって生成された二人(作中主体を擬した「僕」と、批評会で提出された疑問を投げかける「インタビュアー」)による、1万字におよぶ擬似対話。

大塚凱さんの俳句を、あるキャラクターの内面をトレースした文言であると仮定して、構築された「僕」のおしゃべりに、ほんとうに読む価値があるのかどうか、疑問と言えば疑問ですが、「インタビュアー」が、いい質問を、批評会からピックアップするとき、まあ、面白げなことを言うんですよ。

「僕」● でも、僕はいつも、もう一人の僕がいるような気がしているんです。〈姿見のなかの裸といれかはる〉。鏡の中の僕は、僕と同じ顔をして、僕と同じ裸でいる。でも、彼が見ているのは、僕のいるこちらの世界です。彼と僕が入れ替わったら、世界はどう見えるんだろう、と時々思います。あるいは、〈海市から見ても僕だとわかる鼻〉。遠くの海市にいるのは、本当に僕なのでしょうか。僕によく似た、別の誰かかもしれない。僕であって、僕でないもの。それが「腹違いの双子」の正体なのかもしれません。まだ書かれていない句、というよりは、書くことのできなかった、もう一つの人生。そんなイメージです。

第964号(2025年10月12日)には、上田信治「成分表98 支持体」。この回から、同人誌「里」の再録ではない、新作のシリーズ始まります。この回は、レオナルド・ディカプリオと東出昌大について、すこし(そのネタで、なんで「支持体」(キャンバスとか粘土のような、作品を固定する「台」となる物質)の話になるのかというのが、それこそ、ネタです)。

第965号(2025年10月19日)「中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜」は「N'夙川BOYS「物語はちと?不安定」」なつかしい‼ 男女デュオ+ギターのメンバー3人なんだけど、この3人のルックスが、キャラ的な意味ですごくよくて、漫画とか映画の中のロックバンドみたい。ゆらゆら帝国みたいな存在になれたらいいのにと思ってたけど、そうはいかなかったみたいで、残念。

第966号(2025年10月26日)の、小笠原鳥類さん「足跡の化石」は、詩の雑誌「幻代詩アンソロジー」Vol.5から、岡村知昭さんの句を紹介。〈懸垂に戻らなくては昼寝覚 岡村知昭〉

第969号(2025年11月16日)西原天気さんの【句集を読む】「音と意味/彌榮浩樹『銃爪蜂蜜 トリガー・ハニー』の一句」〈雨と雪あねといもうとほど違ふ 彌榮浩樹〉への感想「音と意味は、このように、1枚の同じ設計図から仕上がるものではなく、音には音の、意味には意味の設計図がある。シンプルな事実が、《雨と雪あねといもうとほど違ふ》という15音に収まっている。これは私にとって、かなりエレガントな出来事です。」

第970号(2025年11月23日) 同じく天気さんの【句集を読む】「バケツと交番/森尾ようこ『惑星』の一句」で引用されているのはぽりばけつぽりぼつくすに日脚伸ぶ 森尾ようこ〉あははははは。しかし「ぽりぼつくす」はすごい。
森尾ようこ 木偶 10句 
森尾ようこ くらげ
週刊俳句10句作品にも二回ご登場いただいています。

第971号(2025年11月30日)小野裕三「ラドゥ・シェルバン句集『百俳句(HYAKU HAIKU)』評」元・駐日ルーマニア大使である著者の、3行形式の句集。小野さんの序文を和訳して掲載。

ついに見つける
風がどこから来るのか
初雪

ラドゥ・シェルバン 

第972号(2025年12月7日)、ほとんど毎号ご寄稿いただいている、鈴木茂雄さんの「野間幸恵の一句」、今号も載っています。

そよそよと知識のあとの聖書かな 野間幸恵
「そよそよ」という音は、知識が消えていく音であると同時に、言葉が新たに芽吹く音でもある(…)一句の余韻は、信仰でも無信仰でもなく、ただ純粋な文学への驚嘆として、読者の胸に永遠に響き続ける。


第973号(2025年12月14日)には【番外・音楽千夜一夜】という副題の、小津夜景さん「ジェドゥ=ブレイ・アンボリーのスープ」
偶然、手に取って、買ってしまった盤から、ぜんぜん知らないジャンルの、巨匠と呼ばれる人の音楽と現在を知るという、楽しいスケッチ。

第974号(2025年12月21日)には、上田信治「成分表」新シリーズ2回目「石原良純」。そうか、ディカプリオ、東出昌大の次が、石原良純というのは、自分は俳優という人たちの人生に興味を感じているのか。

大遅刻、申し訳ありませんでした。
来年もよろしくお願い申し上げます。



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