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2012-12-23

【落選展2012を読む】 落選展よ水戸橋よ(其の四)  島田牙城

 落選展2012を読む
落選展よ水戸橋よ(其の四) 

島田牙城



ところで水戸橋のそばに水戸納豆は売つゐるだらうか。

関西人は納豆を喰はないといふのは嘘(喰はない人も多いことは確かだが)で、子供の頃から普通に藁づとに入つた納豆やら、経木(へぎ)で三角に包まれた納豆を売つてゐたし、それを喰うてゐた。

いや、言葉の重さとか粘り気といふものについて、ここまで十八編読んできて考へてゐるわけですよ。

もちろん、粘り気があればそれで良し、なわけもなく、たとへば佐藤文香の俳句といふのは、本来なら粘る筈の納豆に大根卸しを加へたさつぱり感があるんだよね。

でももともとの粘り気はあるでしよ。

その粘り気に味付けするものは、大根卸しでも刻み葱でも芥子でもおかかでも、出汁醤油でも生醤油でもいいのだけれど、といふかそこは千変万化となるのだらうが、もとの粘り気といふのは、やはり俳句作りには大切なのではないかしらん、と思ふんだよ。

たぶんそれは思考の深さとか、ものへの執着心とか、いろいろなことが交錯して醗酵する粘り気なんだらうね。

あと数編読んで、最終的には何編かをピックアップすることになるんだけれど、

今朝喰つた納豆のねばねばを口中に残しながら……

さて、続けます。



離ることなし流灯と映る灯と  生駒大祐

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この句に流れてゐる抒情の質は、類句のあることを感じさせはするものの、確かな描写ではある。(大丈夫だよね、みんな。上五の読みは「さかることなし」だよ。)

鶏頭花手話に独言なかりける  生駒大祐

いや、まいつたね、これは。この句は普遍的だよね。これだよ、これ。一番始めに書いた、「離れてゐるのに付いてるみたい」な俳句。「何で鶏頭なんだよ」と問はれたら、へんな理屈は捏ねないで、笑窪を浮かべてにこにこしてりやいいやね。裕明はさうして遣り過ごした。

で、絶対に言つてはならない言ひ訳が、「だつて、手話してゐる人の横に鶏頭が咲いてゐたから」つていふ状況説明。そんなことはこの句には何の関係もないんだから。

下京や氷柱肥えゐて一つ根に  生駒大祐

も間違ひのない上品。〈下京や雪つむ上の夜の雨 凡兆〉は当然知つた上の句だらう。現代の下京で氷柱がそこまで太ることはまづなからうが、遡ればさういふ時代もあつたことだらう。

ただ、この人の句を読み通して湧いてくるのは、自身でこれらの句から手応へを感じてゐるのだらうかといふ疑問なんだ。落差が激しいといふこと。

この人へも、勿体無いなあといふ感想を吐いておかうか。



さて、次の高井楚良さんからは、一句も抜く句がなかつた。

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かういふ句群といふのは、読んだあとに虚しさしか残らないんだ。

人ゆたか國は貧しく〉〈思はざる國となりたる〉〈この國あつての願ひ〉〈憎むべき都会〉〈寄り添へば家族〉〈神よりも人を尊ぶ〉〈生きてゐる証の涙〉などなど。

かういふ句の間あひだにいい句も混じつてゐたのかもしれないけれど、それをわざわざ抜いてきて「いい句があるねえ」なんて言ふほど、読者といふのは優しくはないんでね。

それをやるのは内輪意識。僕はさういふ意味では内輪ではないといふだけのことです。

えつと、言ひにくいのですが、俳句といふものと、もう一度零から出会ひ直されたはうがいいのではないでせうか。

たとへば、今井聖さんが大好きな誓子をわざと避けて楸邨門に入つたといふやうな、自らへの荒療治を試されることをお勧めします。

それとも、冒険心からかういふことをやつてみたくなつたのか、普段雑誌で拝見する句ともえらく違ふやうだし、空回りの一連といふことなのでせうか。

(あとから追記するのですが、この一連が予選を通つてゐるのですね。予選者が間抜けなだけですから歓ばれないはうがいいと思ひます。)



万緑のなかに一樹を植ゑてきし  川奈正和

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この人は面白い。ご自身の中にいろいろな物語を溜めてをられる人なのかなと思ふ。

最近、長谷川櫂さんの『震災句集』に触れて、森を見て木を見ないのであれば俳句は作れないんだよね、といふことを、ある年間時評(「口語俳句年鑑2012」未刊)に書いて、自身ですごく納得してゐるんだけれど、川奈さんは一本の木を見るだけでは満足出来ずに、自分の木を植ゑてしまつたんだな。その気概や良し、である。この一樹、輝いてゐるね。

劇いまだ劇中劇や花は葉に  川奈正和

の「のんびり感」も魅力的だなあ(少し季語は甘いが)。

北窓を開きこの地に降りて来よ  川奈正和
恋のあといちにち風の中の猫  同
胡桃割る廃仏毀釈とも違ふ  同
逢ひにゆく紅天狗茸ふところに  同
手旗から手旗へ伝へきたる東風  同


一句一句の質量が、五十句を通して安定してゐるのもいいですね。

句の中心がぶれないといふことも感じる。たとへば〈手旗から手旗へ伝へきたる東風〉でいふと、「手旗から手旗へ」といふ見立てが斬新なだけではなく、「東風」へ納まるまでの「伝へきたる」がすごくゆつたりとした時間を読み手にもたらしてくれてゐるから、「東風」といふ最後に置かれた二音が際立つてくる。そしてこの時間の流れが、仲春の気を十全に語つてゐるんだよ。で、この作者が「東風」を書くといふ一点に集中してをられるといふことが見えて、一本の屹立する言葉として背筋が伸びてゐる。それがすごく清潔だなあと感じ入る。

まだまだ線が細くて折れやすさうではあるのだけれど、年輪が重なることで自然と太くもなるのだから、無い物ねだりをする必要もない(ぼくはこの方がまだ若い人だと思ひ込んでゐるふしがある。もしも年配の方だとしたらそれは羨むべき年の取り方なのであつて、穢れを知らぬお年寄りといふことになる)。

もう少し一句に拘らうか。

若菜摘み一夫多妻のごとくにて

など、作者の教養の上にのつかつた遊び心も垣間見られる。細かな事はいいとして、若菜摘つて乙女の作業だつたのだもの、そしてこれが求婚にも結びついてゐたことを当然作者は念頭に置いてゐる。一夫多妻とはまた豪勢で羨ましい若菜摘だけれど、この句にスケベ心はみられない。句が明るいからだらうな。

うん、この人の句にはどの句にも光が差し込んでゐるね。その光のシャワーを浴びて、僕を幸せにしてくれるんだ。

まあ細かなことをいふと、僕は「み」の送りが気に入らないけれどね。これは作句上の盲点として常に気に掛けておかれるといい。送りを伴ふと「名詞なの? 動詞なの?」といふ混乱が生じるんだよ。前に連体形の用言が置かれてゐれば(たとへば「楽しき祭り」のやうな、ね)送りがあっても名詞だと知れるけれど、さうでない場合は、ヤバイんだ。この句の場合も、揺れるよね。「み」を取ると漢字が続くといふ不安もあつたのかな。それにしても「若菜摘一夫多妻のごとくにて」としたいなあ。さういふ一字一音への気遣ひは、大切にしてもらひたい。

口中の水澄みわたれ黙秘権
雨降れといへば雪降る淑気かな


なんて、理屈っぽい(口→黙秘、雪+淑気=お降り)といへばそれまでなんだらうけれど、言ひきる潔さが理屈を越えて読者に光を届けてくれてゐるんじやないかなあ、好きだよ。



紫陽花の見える満員電車かな  大穂照久

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この句はすつきりしてゐるし、主人公の位置(満員電車の中でまさに今押されてゐる人として)も見えるし、はたしてこの主人公の思ひや如何に、なんぞとこちらの思ひを巡らせてみたくもなる句だな。同じ意味で、

鳥小屋の床に木くずや秋の暮  大穂照久

もしつかり書けてゐる句として推奨できるのだけれど、〈ともすれば夕立ややもすれば愛〉は、今読み返しても自身で良い句だとおもへるのだらうか。僕からすれば「やめてよね」といふことになるんだな。

卒業の日の焼肉をうらがえす〉なんて、一瞬書けてゐるやうにも見えるだらうけれど、同じやうな無惨な屍が山をなしてゐることは、知つておかれるべきだらう。いや、「どこにあるんですか、見せて下さい」と言はれても提示はできないんだけれど、〈卒業〉から〈うらがえす〉といふ連想のベクトルが陳腐なんだよね。

だからこの人の場合は、自選力をつければ化けるかもね。



トーストの上のバターのやうに蔦  山下つばさ

≫読む ≫テキスト

山下つばさの俳句はリアリズムなんだよと、かつて評したことがあつたし、この句なんてまさにその僕の言葉を実証してくれるやうな把握力だよね。だけど、だけど、

今回の五十句は自分だけが面白がつてゐるやうな句が多かつたぞ。

応募しておくだけはしておくか、といふやうな、なげやりな纏め方もまつたく気に入らない。

〈ワンピース〉のすぐ後に〈ONE PIECE〉だつたり、
〈ぽたりぽたり〉が二度出てきたり、

そんななげやりな態度は一句にも現はれてしまふものなんだな。

(ここ、間違へてほしくないんだけど、俳句でとある主人公のなげやり感を表現するのはいいんだよ。投句の態度がなげやりじやんと言つてるんだからね)。

アネモネの白が厨を白くする〉なんか、こんなのだつて俳句になるじやん、とでも言はんばかりに適当なんだよ。

新宿西口空蟬を髪につけ〉は、一応印を打つたしいい句だよ。でもなあ、〈空蟬を髪に付け合ふ遊びかな〉が先にあれば、贔屓したくても採れないよね。



といふことで、二十三編を駆け足で読んできました。

飯島葉一郎さん、谷口鳥子さん、佐藤文香さん、川奈正和さん
の四編は読み応へ充分だつたな。

文香さんのことはよく知つてゐるし、この人の場合は賞のどうのかうのは関係なしに、常に〈俳句〉に対して全力投球してゐるのだから、まあ、また自分を揺さぶればいいさと言つておくかな。二十代もまだ数年残つてゐることだしね。

さうさう、長谷川櫂さんの言葉はことばとして、あんまりお勉強はしないでね。研究はどんどんするべきだらうけれど、もう「まねぶ」時期は過ぎてゐると思ふから。

では、あとのお三方の略歴でも見に行つてきます。(暫し待たれよ)

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飯島葉一郎さん、1987年生まれ。京都市在住、ただこれだけ。いいなあ、かういふの。え、まだ24歳ですか。

あのね、「肉じゃがの気持ちになりかわりて」といふ前書はまつたく要らないよ。

明け方の夢 廃屋に蝶満ちて〉は好きな句の一つなんだけれど、この空きは不要だね。

タイトルになつてゐる〈ふくろうや舌のごとくに日が垂れて〉はね、この比喩は陳腐なんだ。シュールレアリズム時代の絵にあるよ。

夕焼けに万の背中の潜みけり〉は大好き。〈潜みをり〉とどつちだらうか。自分で考へてみてください。

長き舌見せ合っている祭かな〉〈まぶたなき夜が牡丹の上に浮く〉あたり、もう、ぞくぞくします。

名前つけてやろ焚き火の中を行く塵に〉これは駄目だ。〈名前つけてやろ〉に作者が出てしまつてるね。作者は裏で操作していたらいい。前に出て来ると独りよがりになる。

それにしても、楽しませて頂きました。

いろいろ言ふ人はゐるだらうけれど、気にせず作句時の手応へを大切になさるといいと思ひます。

谷口鳥子さん。この人も作品からいくと関西だよね。そして今のところ性別不詳。どつちでもいいのですが、見てきます。(暫し待たれよ)。

谷口鳥子さん、1970年生まれ、兵庫県出身、主婦(時折、実家の介護手伝いや、工場アルバイト)、趣味、ボクシングジム通い、かあ。

いや、貴女には貴女にしか書けない世界があるのだから、突き進めばそれでいいですよ。

貴女の句はね、本当に雑なの。でもね、何が、何処が雑なんかは言はないね。そんなん、気にせんでいいんです。

雑といふこと以外で少し言うとくと、一句目が破調といふのは、拙い。そんなことで嫌はれるとか、先入観を持たれるのつて、つまんないよね。

得体の知れぬ〉は、具体的に書かないと駄目。どう得体が知れないのかが解らない。

夏星の配線だけをつなぎ去る〉つて、なんだらう、最後だけメルヘンて、おかしいでしよ。で、それがタイトルといふのも、変でしよ。最後まで、貴女は貴女でゐるべきですよ。

そして川奈正和さん、愛媛県松山市生まれ、無所属。年令不詳ですね。

背番号見せ合ふことも愛の日に〉の〈愛の日〉が解らない。愛日(冬の日)のことをかうは言はんしな。

(グーグル検索すると、バレンタインデーのことをかう言ふとか、……、うーん、気持悪くない? 「見せ合ふ」なんてさあ)

草摘みて天に倒れり羽衣伝〉の〈倒れり〉は文法ミス。

ほかにも意味不明の句が混じるけれど、僕は今回の中でならこの人を推す。

賞といふのは、葉一郎さんや鳥子さんを語り尽くしたあとで正和さんに栄冠が輝く、といふぐらゐのはうが面白いのではないか。

これからの俳句に表現の幅をもたらす物としての新人賞であつてほしいなと思ふし、

このお三方は予選にも通つてゐないやうだけれど、選外にかういふ「可能性としての俳人」がたくさんゐるのだといふことを確認して、僕は今ほつとしてゐる。

新人賞といふのは、行儀が悪いはうがいいに決まつてゐるんだよ。

さうさう、最近歌人の鵜飼康東さんが、「最も重要な基準は可能性だ。「下手だが、どこか見どころがある」と審査員に思わせればしめたものだ。逆に「うまいがこれが限界だな」と思わせればおしまいだ。」てツイートなさつてゐたけれど、ぜひ俳句系新人賞の審査員の方にも読んでほしいですね。

その作品から伸び代を感じられるのかどうかといふのは、すつごく大切な部分だと思ふんだよね。

妄言多謝

水戸橋あたりの一杯呑屋で、またお会ひしませう。ありがたう。

2012-12-16

【2012落選展を読む】 (20 高井楚良 21川奈正和 22大穂照久 23山下つばさ) 村越敦 佐藤文香 谷雄介  司会:上田信治

【2012落選展を読む】
田植唄からから大根インコまで 
(20 高井楚良 21川奈正和 22大穂照久 23山下つばさ)

村越敦
佐藤文香
谷雄介 
司会:上田信治


この対話は、2012/11/23 14:03から2012/11/23 17:03にかけて、skypeのメッセージ機能を通じて交わされたテキストを、再構成したものです。


村越: 14:10にネットカフェに落ち着く予定です。

上田: 谷さんからは、まだメール来てないです。
谷さんの電話分かります?

村越: わからないです、すみません…

上田: ま、とりあえず、待ちますか。

(……)

上田: あ、前回の藤尾ゆげさんの〈雹過ぎてパン粉の中に右手かな〉の、〈雹過ぎて〉という言い方が微妙なようなこと言いましたけど、あれはありですね。撤回します(句としての評価は変わらないのですけど)。

(……)

上田: 連絡とれないんで、佐藤文香さん、誘ってみますか。

上田佐藤を会話に追加しました

佐藤: こにゃちは

村越: こんにちは

上田: あ、よかった。

終わったら、夜、中華って思ってたんだけどOK? 谷さんと村越さんなら唐揚げとかかなあと。

村越: 中華超ラブです♡

佐藤: 私は、少食なので何でもいいです

上田: では、前半で参加の谷さんが、コレステロール過多のために退出されましたので、後半は佐藤文香さんに加わっていただき、「落選展を読む」進行させていただきます。

口開けは、順番にやりましょうか。村越→上田→佐藤→村越の順で。




20 高井楚良 ウタ
≫読む ≫テキスト


上田:では、まず高井楚良さん「ウタ」。一次予選通過作品です。

村越: 最初5句くらい連続して好きな句がならんでいて、冒頭から引き込まれる感じでした。

春の海出でて誰も狂はずにゐる
はだれ野や見知らぬ人と助け合ひ
逢へぬゆゑ詩を作りたる春の月
げんげとは指から指に渡すもの
このあたり空はげんげの色似合ふ


その他は、

木と水と親しくなりし巣立鳥
葉櫻に獸の匂ひゆきわたる
宇宙軸歪み戻らず桐一葉

あとかなり好きだったのが、

亡き父の毛生え薬や初鏡

でしょうか。ひろい意味での生死のモティーフを扱った作品が多く、抽象的な書きぶりには作者性を強く感じました。

上田: 押し出し、強いですよね。なかなか問題作だと思う。佐藤さん、いかがでしょう。

佐藤:このあたり空はげんげの色似合ふ

が好きでした。全体に、リズムのいい作品が多いように思いました。

ただ、フレーズといいますか、村越さんの言われる生死のモチーフで言えば、〈生きてゐる証の淚しぐれ傘〉の〈生きてゐる証の淚〉や〈生きること生き延びること冬螢〉の〈生きること生き延びること〉のようなところに疑問を感じます。

村越: たぶん、地震とか原発の話を念頭においてますよね。

佐藤: 最後の〈忘るるに使ふ一年雛流す〉は、拙句に〈忘るるにつかふ一日を蔦茂る〉があることもあり、フレーズが既存のものであったり、同案多数の感があるのが惜しいと思いました。

村越: なるほど。信治さんは、どのあたりに「問題作」だと感じる所以がありましたか?

上田: 言いたいことが多い句、という印象でした。

春の海出でて誰も狂はずにゐる〉〈誰も知らぬ地球の重さ蚯蚓鳴く〉たとえば、誰も、という言葉のある二句。

誰も、という裏に、自分は、という主張がある。自分は狂って当然と思うのに誰も狂わない、自分は知っているのに誰も知らない、ということなわけで。強烈な自負とナルシズムを感じます。それ自体は、ユニークな個性ですよね、ちょっと国士風な。

ただ、その…

佐藤: 谷くんからTEL。今から入ると

上田: おお、佐藤さんどうする、このまま居てくれていいですよ。

佐藤: ひとことずつぐらいしゃべる人になります

上田を会話に追加しました

谷: おはようございます・・・(大汗)入りやすそうなとこで入ります。。

佐藤: まだ1つ目だよ

上田: よろしくお願いします。

村越: 自分ひとりは違う、自分だけは大衆に流されず、本質が見えているみたいな感じはたしかにあるかもしれないですね。

上田: うんうん、その主体のでかさというか壮大さのわりに、言ってることは常識的というのがあって、それ、両立しちゃダメなんじゃないかな……俳句は短いだけに、単なる言いっぱなしになってしまう。何をもって、当たり前を越えるかという話なんですけど、、、

そういう意味で〈春の海〉はちょっと舌っ足らずだけど、ありなような気がする。〈地球の重さ〉は、いただけない。

村越: なんかこう都会的なものへの批判的な目線、もっというと近代的なものへのアンチテーゼみたいなものを作品から感じました。たとえば

上田:憎むべき都会の明かり戀螢〉とか?

村越: そうですね、原発を思わせる一連の作品もそうかなと。

逆に、作者にとっての理想郷はどこにあるかというと、たとえば田植唄世界の始めと思ひけり人ゆたか國は貧しく野燒かな〉とか、このあたりにあるように感じました。ちょっと見方がありきたりというか、枠組みとしては月並みかもしれませんが。

上田: 〈都会の明かり〉これ、もっと節電しろってことなの?

村越: なるほど。笑

上田: 超常識的・・・

村越: そう、一周回って常識的なんですよね、そう読んでしまうと。

上田: いや、節電って読めちゃうような発想の枠組みが、普通どまりなのが問題で。この句の場合は〈戀螢〉が、よくないんでしょうね。都々逸みたい。

稲作、共同体、まほろば、みたいな句の幻想味に、方向としては可能性感じました。あと〈このあたり〉の句いいですね。

佐藤: タイトルの「ウタ」は「歌」「唄」「詩」であり、〈この島はウタに恵まれ踊りけり〉という作品にあるように、ふるくから人々が声を出してうたいあげるようなことをさすのだと思います。

それがその現代文明への反発みたいな作品世界の柱になっているのでしょう。でも、この作品自体がやはり、常識の範疇にあるように思われます。

谷: おお、いい解釈。

村越: まさに、同感です。

ただ若干謎が残っている作品もあって、〈加速する亡者の月日つくつくし〉とか、あとは「毛生え薬」の句みたいな、そういう反・現代文明みたいなところから離れたものは面白いな、と。

佐藤: 〈加速する〉これは、ある人が亡くなってから月日がどんどんすぎていってしまうことじゃないでしょうか。そして、そこに新しい生命としてのつくしが、という、これもそんなに謎じゃないように思います。

〈毛生え薬〉は、たしかにおもしろくはあります。

上田: ある人が亡くなって、とは読めない気がする

村越: もっと、集合体としての亡者かと思いましたが…歴史的蓄積を感じるような。

上田:  亡者って、死者に対する敬意のない言葉でしょ。そのへん、いろいろ措辞に欠点はあるんです。

佐藤:加速するの位置とか?

上田: 亡者が加速したら、こわいよw

村越: なるほど 笑。あと、上五形容詞パターン多いっすね。
「憎むべき「頼もしき」「ゆくりなく」

佐藤: (谷くんそろそろ入れば?)

谷: 腹痛からの復活。。そして出力した紙を捜索中・・・やりとりが途中からしか見られてないんですが、

詠みこむ対象がどれも大きすぎ(世界とか天空とか宇宙とか)

村越: たしかに。 ただ、まぁ大景を読む、とはちょっと違うのかもしれないですけど、スケール感のある作品で揃えてこよう、っていうのはなんか憧れます。

佐藤: 「神様」「神」もある。

谷: あと、旅と昼寝覚とか、卵と原爆忌とか、寒いねとあたたかいとか、なんかこの季語の組合せ見たことがあるよね、みたいな句が多い、かな。

とは言え、佐藤さんの「ウタ」の解釈がいいと思った。

上田: おそらく田中裕明のある面を継いでいこうという意図が。〈ブータンも田を植ゑる國うたの國〉とか、あと〈正座する彼も古人衣被〉の句の、古人をふるびとと読むと故人の意味なんだそうで…。

村越: 〈なきひとにならひて坐る桃の花〉 ですね。

上田: 〈眼鏡とれば我も古人や秋燕〉っていう句もある。そういえば、國を憂えるような句が、晩年の裕明にあったなと。

谷: 「お」と思う句もあると思うんですけど、

葉櫻に獸の匂ひゆきわたる
紫陽花に雨は一粒ずつ刺せり
誰も知らぬ地球の重さ蚯蚓鳴く

とか

でも、あまり大柄な句が続いているので、50句このトーンだと食傷気味になってしまう。もう少し、細かい、つまんない世界に目を向けると、もっと幅が見えてきて読んでる方も面白がることができる要素が増えると思いました

以上です。




21 川奈正和 掌上
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谷: 恵方より来る一球をわが打法

いいですね。

佐藤: 私もそれです

上田: ぼくは、それと、

生御魂お菓子の家に生まれしと

谷:狼の毛もて書くべし立志伝〉とか。この作者の発想、作り方、どう説明しましょ。

佐藤: (谷くん、いないときに「口開けは、順番に」というかんじだったのですが、どうしますか)

谷: む、原則主義者だな・・・とはいえ、従います!(大遅刻)

上田: 谷さんつづけてほしいだす

村越: だす

佐藤: つづけろ、遅刻者!ww

谷: ひい、ごめんなさい。。

上田: ははは

谷: 面白い!と思う句と、これはもしかして・・・つまんないかもと思う句が混在している印象

村越: 僕はメモにひとこと「エネルギーがいる」って書いてありましたw

上田: かなり急いで書かれたのかな、と思いました

谷: でもちょっと今僕別の事を考え始めていて、最初に読んだときは「つまんない」と思ってた俳句が、改めて今日読み返すと面白い気がしている・・・

佐藤: 白魚を食み暮らしたる魚に火を〉の白魚→魚、〈劇いまだ劇中劇や花は葉に〉の劇→劇中劇、〈父の日の父は主峰に真向かへり〉父の日→父……〈薔薇色の世をかへりみる薔薇の門〉薔薇色→薔薇、というふうに、同じ言葉を素材違いで同居させている作が多いのが特徴だと思いました。

村越: 〈劇いまだ〉は、入れ子構造として結構成功してると思います。好きです。

谷: たとえば〈北窓を開きこの地に降りて来よ〉とか〈酒池肉林われ空杯に花受けて〉とか〈秒読みの声うつくしき秋の暮〉とか。

一句一句は面白いんだけど、この作者の創作対象の幅の広さにより、風景や登場物があっちこっちに飛ぶ。

上田: 谷さん、自分で、なにが面白くなってるんだと思います?

谷: 全体としての印象が散漫、それが村越君の「エネルギーがいる」ということなのかなと。コンディションの問題?落ち着いて読み返しているとじわじわな感じ。>信治様

佐藤:血と汗と涙こぼるる露の秋〉とかは、もうこぼれまくって壊れちゃってる感じで、ここまで来ると、面白いんだか面白くないんだか。でも、のっちゃうとゲラになっちゃう感じで読みきってしまえるのかもしれない。

谷: それぞれ独立した50句とはいえ、連作性、全体でのストーリーテリング、作者の主体性みたいなものを、僕らは読むときに気にしてるんだろうな、と思った。

村越: ほんとうに。

上田: 〈酒池肉林〉の句とか 手拍子にあわせて作ってるような、書き飛ばし感があるんだけど。空杯っていうところが面白いの? みんな酒池肉林 おれだけいっしゅん空杯 みたいな?

谷: 血と汗と涙、は最初は決まり文句でつまんないなと思っていたが、敢えてやってるというところと、「露の秋」というのは付けてきたのは少し笑えるなと。

上田: それは、いくらなんでも手拍子過ぎる気もするんですが

谷: 充実(酒池肉林)⇔空虚(空杯)の対比ということではなく、ありえない、存在しえない風景の面白さ。


佐藤: 言葉からつくってる人、しかも途中「酒池肉林」「黙秘権」「廃仏毀釈」「遣欧少年」など、高校の教科書を読みながら妄想して作ってるのではないかとも思いました。

谷: 信治さんの言う「急いで作っている」ってその辺もあるのかな。

「花受けて」とか、何カッコつけてんの、みたいなところが面白い。僕にとっては。

上田:絶滅種さながらに立て花吹雪〉はお気に入りになってきた。

村越: 言葉に重心がかかってる句は、どうしても成功の仕方がワンパターンになる気がするのですが…。

上田: おお

村越: あっ、おもしろい!終了!みたいな。

佐藤: 言葉の繰り返しが多いところも、急いで作ってる雰囲気出ますよね。口をついてどんどん出てくるのを書き起こしたような。

上田: よくいえば疾走感

村越: うーん、その特徴的な言葉(黙秘権)とかがもう少し実体をもって迫ってくる句があると、読み手の感動のバリエーションも広がって、いいと思います。

 疾走感、つきつめれば言葉は言葉として独立しているナンセンスさは僕は好みなのですが、これだけだとやっぱり…という。

上田: かっこわるいカッコヨサ が魅力だという気はします。

谷: しかし、〈恵方より来る一球をわが打法〉はすごいですよ。中七まで作って、「を」で切って、「わが打法」はなかなか言えないと思います。

村越: すごい勇気ですね。

佐藤: 「わが打法」のあとの省略もきいてる。

谷: そうそう、気持ちよく打球が飛んでいく感じ。

上田: 万太郎の、もとよりわざのすくひなげ を思わせる名調子です

谷: でも、これ面白がるのってこの界隈だけかも知れないですよ。

村越: www

谷: 「俳句」誌上の座談会では引っかからないような気も・・・いやどうかな

上田: 予選もね

谷: まあ、予選は通らないでしょうね。

上田: いや、でも楽しませていただきました

村越: 同感です。

谷: かなり好評でしたね

上田: 谷さんが乗ったからw

谷: また変な句見つけた雨ふれといへば雪ふる淑気かな

村越: あ、〈若菜摘み一夫多妻の如くにて〉も好きですw

上田: ひどいw



22 大穂照久 都市
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上田:大穂照久さん。第1回週刊俳句賞受賞者だったりする。

佐藤: (〈土降るや棺のごとき庭園に〉って、霾じゃないんですかね)

谷: (「土降る」っていう書き方もあるよ)

佐藤: (そうか)

上田: (歳時記的には、あまり推奨されないでしょ、たしかに)せっかくなので、佐藤さんから

佐藤: 今のことを書こう、という徹底した意識のある句と感じました。うがっとこける作品もありますが、好感のもてるものが多かったです。

上田: 句をあげていただけますか

佐藤:  
猫柳眺めている猫沖へ行けよ
屋上に空のあふれる皐月かな
遠い火事ぼくには口内炎がある

とくに、「遠い火事」の句が好きでした。「ぼくには口内炎がある」の「は」「が」の助詞のつかい方、さっぱりした字余り。「遠火事」と言わないところも、俳句的なところから脱する意志があるように思います。

谷: 猫柳は僕も好き。中八、下六ののたりのたりがたまらんね。 ほしいりつららわれにくれよ、以来の下六。

村越: 猫柳、ぼくもいいと思いました。

上田:
蛍烏賊ひとり眼をちぎりちぎり
瓶ビール海の深さを思いけり
吊るされて窓拭く人や秋うらら
飛行船しずかに流れクリスマス

村越:
メーデーや君の着ぐるみぬいぐるみ
紫陽花の見える満員電車かな

谷: 全体的な印象は佐藤さんと同じく、発展途上っぽい。が、きらりと光る句がいくつかあるね。

村越: あと〈撃ちおえて水鉄砲の軽さかな〉も。

あやかさんの言うとおり、ザ・20代・男の句!という印象がありました。全体的に。くるりとかが歌ってそうな。

佐藤: やはり特筆すべきは恋の句のずっこけ加減ではないでしょうか。20代男子特有の。

村越: 恋の句!ほんとうに。

谷: 確かに>あやか氏

上田: え、どこがそんなに

村越:  
公園の落ち葉を散らすふたりかな
毛布抱く君の紅茶はすぐ冷める

谷: もうやめて・・・これ以上・・・耐えられない・・・

佐藤: あと、

ともすれば夕立ややもすれば愛
切手貼る愛を込めつつ貼る痛いか

村越: 切手!!大きく×ついてますw

上田: 毛布抱く は、だめかなあ?

谷:コンセント抜く春の夜のかなしみに〉愛の対象がコンセントならまだましなのに。。

上田: え、コンセントは、愛の句なの?

佐藤: 毛布抱くは、私が×です。毛布抱く君、すぐ冷める君の紅茶、両方言ってしまうと愛情過多。

上田: 紅茶がメタファってしまうか。

谷: (正しくは、プラグ抜く・・・かな)この句を恋の句と呼んでしまった自分がこわい・・・>信治さま

村越: 君ー毛布ー紅茶ー冷めるの言葉の連なりが、もう、ありふれすぎてる感じがして。

谷: 彼女が帰った後の句か・・・いたたた>毛布

佐藤: ともすれば夕立ややもすれば愛〉は、作者は自信満々の可能性がある。が、しかし。

谷: が、しかしだ。

上田: ああ、もうやめてあげて

佐藤: w

上田: あるいは、大穂くん、逃げて。

村越:夕凪や火力発電所が彼方〉とか突き放した書きぶりのほうが真骨頂を発揮できてる気がします、やっぱり。

吊るされて~は信治さんも挙げてましたけど、好きです。

上田: 火力発電所と水鉄砲の句は、既視感あるけどね。

谷: 【再掲】切って貼る愛を込めつつ貼る痛いか

村越: 痛いかが…痛い。

谷:秋の雨犬の背中のやわらかし〉とかもさりげなくいいですね。

上田:飛行船しずかに流れクリスマス〉凝ってないけど、いいクリスマスの昼だなあ、と思いました。

村越: いいですね!愛せる句。

谷: いや、それ僕も好きです「流れ」のうまさですね

村越: あーでもリア充じゃないと書けないですね、それ。その余裕は。

上田: んなこたあない

村越: そうですね。笑

谷: 村越君、飲もう。

上田: 油を

谷: もうお酒がないと耐えられないよ。

油も

村越: やりましょう。

上田: じゃあ、大穂さんには、会ってお伝えすることにして

谷:瓶ビール海の深さを思いけり〉は類想あるでしょうか。

佐藤: それ、私も結構いいとおもいました。

上田: 瓶ビールって言葉の、今ならではの持ち重り感が、海の深さに通じてるので、ないような気が>類想。

谷: 持ち重り感!(餅・・・餅想い感) ですね。ありがとうございます!

餅想いキュン。

あ、すいません、次いきますか・・・

上田: ああ、お腹空いてきた

村越: 次、いきましょうw

佐藤: (化粧しながらやってます)

上田: 予約4人にしなきゃ

佐藤: 酒♪

谷: 餅って・・・逆から読むと「ちも」だ・・・

上田: ちょっと村越さん進めといてくれますか

谷: (句会もやりましょう)

村越: あ、はい。笑

谷: やりましょう→ヤリましょう

佐藤: (ちもって何)

村越: ヤリましょう

谷: ちも・・・あの恐るべきちも・・・

佐藤: 遅刻人の暴走をとめるのだ、

谷: あるいは、めそ・・・あの恐るべきめそ・・・

むにゃむにゃ・・・



23 山下つばさ 晩年
≫読む ≫テキスト


村越: では、 晩年 山下つばささん。いきますか。

谷: むにゃむにゃ村越!村越るーじゅ!

村越: 起きてください。笑 ゆーすけさんから、お願いします。

谷: えっ、まだ準備できてないよ(ちも)

村越: あやかさんはどうですか?

谷: ばか、あやかさんはおめかし中だよ。。

村越: (はっ)では、むらこしからいきますね。えっと、僕、この一連はめっちゃいいと思いました。好きでした。

佐藤: まじでか。

村越: ええ。こう、漫画的な世界観というか。

佐藤: 大根のやうなインコだよ?

上田: 村越さん、遠慮無く言ってやって

村越: いいじゃないですか、大根インコ。

あのーシュールなんですけど、不思議と共感できる作品が多いなという印象で読んでいてとにかく面白かった。

上田: 王妃のような石もゐるよ

谷: 大根インコwww

村越: 連作の良さをじゅうぶん出し切っていると思いました。

谷: 歯の生えた風船も忘れないで!!

佐藤:芋を煮る芋に翼の生へるまで〉だよ?

谷: (大根のようなインコに共感・・・だと!何を言っているんだこの男)

村越:
蟹を追ふ鳥のかたちのワンピース
空蝉を髪に付け合ふ遊びかな
らんちうもシーツの白が眩しさう
『ONE PIECE』全巻並ぶ部屋の薔薇
泣きわめく人に集へる蛍かな
母馬の野菊のやうに老いにけり
マンホールに人一人消ゆ冬の朝
得しものをしつこくつつく寒鴉


序盤だけで、こんだけ抜いちゃったっていう。

上田: アヤカさん、評価できないことのポイントは?

佐藤: 大根インコとか、翼芋で50句なら、評価します。でも途中で、

耳朶を過ぎて落花となりにけり
梨の花鉄やはらかくなる温度
拾ひやすき骨を拾ひぬ春の闇
青葉へと母消え父の現るる
眼帯をはづし緑雨を走りけり

こういうのがある。まぁ、眼帯は面白いですけど。

谷: 翼芋ww 

そうね。村越君の挙げた「寒鴉」もふつーだな。でも大根インコと翼芋で50句だと、予選通らないよ。

村越: まぁ、それは普通ですかねぇ。

佐藤:トーストの上のバターのやうに蔦〉もだけど、比喩が突飛で、突飛なだけなのは詩じゃないと思う。いや、詩じゃなくてもいいんですけど、これだと面白がらせにとどまってる、という気がする。

谷: 「突飛なだけなのは詩じゃないと思う」( ..)φメモメモ

村越: トーストはちょっとわからなかったですね…

佐藤:歯のない人が笑つてゐるよ桜の下〉とかも、いかにも、こわがらせよう、みたいなところがあります。

村越: 歯のないひとの句は、こわがらせてるんですかねぇ…。僕にはそこはかとない愛着とか、見える気がしますけど。

谷: わかるわからないでいうとわかる。でも、それ面白いんでしたっけ?という改めての問い

上田: この人のって、早いか遅いかっていうとすごい速い俳句ですよね。

蟹を追ふ鳥のかたちのワンピース
蚊柱をよけ教会の屋根真つ赤
泣きわめく人に集へる蛍かな
母馬の野菊のやうに老いにけり
マンホールに人一人消ゆ冬の朝
発光す一心不乱に土筆摘み
転がつて老子に出逢ふ蜜柑かな

文体にためがないっていうことなのかな。

村越: 発光す、大好きです。銀行員が蛍光するのにちょっとコンセプトは近いですかね。

上田: 一心不乱」で分かりやすくなってるんだけど、それもふくめてね

佐藤: マンホールに人が消えたり、ぽたりぽたり、みたいなのがあって、歯のない人、と来ると、石原ユキオの憑依系じゃないですけど、はじめの方だけ読んだら、連作でホラーをやろうとしてるのかと思いました。

谷: でも、徹底してホラーはやれてないのね。

村越: えー、ホラー狙ってないとおもいますよーまったく。笑

上田: ホラーとか奇想っていう文脈でもなさそうだよ、もっと能天気

佐藤: はい、途中から違う、と思いましたが。そういえばぽたりぽたりはもう一度出てくるんですよね。〈鳩尾を離るる椿ぽたりぽたり

上田: コーヒーとかマンホールは、現実寄りに書いてみましたってだけなんじゃないかな

谷: ぶれてる?過渡期?

村越: 同じモチーフが出てくるのは、ちょっと欠点として気になりました。空蝉を髪につける、も2回。

谷: そうね

村越: シーツと、白、動物。

上田: 今日の作者後半3人は、早書きしてる感じする

谷: でも、同じものが2回出てくるのは、俳句の連作の作り方としてはひとつあるとは思うが。

佐藤: それはそうです。わかりやすさからの超現実みたいなことがやりたいんだとしたら、村越さんが言ったように、せっかくの50句をもっと有効につかわないと損だと思いました。

村越: >ゆーすけさん それはそうですね。

上田: 阿部青鞋とかって、すごい早書きだったそうじゃないですか そういう、つるつる進む書き方の可能性ってあるとおもうんですよ

谷: (村越さま、その件についてはまたのちほど・・・)

上田: そのなかで、いろいろつまづきはあるんですけど、いい句もあるし、方向もおもしろいんじゃないかと思いました。

村越: そう、「いい句」がちゃんとあるというのがポイントだと思います。安心して読める句が。それも書けて、同じトーンで大根インコも書ける。すごいなと、思ったのです。

上田: それを楽しむ読み手は必要、という書き方ですけどね。大根インコは、見たまんまだけど好きだな。

谷:押し退けて雛壇上を目指しけり〉という句。お内裏様目指して駆け上ってる感じでしょうか。

上田:  雛壇は、俳壇だったりしないのかな

村越: あーなるほど。笑

上田: いや、いろいろの社会的ヒエラルキーってことでいいか

谷: 雛、檀上か雛檀上か、詠みにくいですね

上田: まあ、それは、あまりおもしろくないよ

村越:かちんこちんの肉の塊花の雨

上田: かちんこちん どう読めと

谷: か「ちんこ」ちん

村越:

谷: 肉の塊・・・品がなさすぎる・・・

上田: 君がだ

谷: ちも

村越: あ、冷凍じゃないんですか?w

上田: そう。でも、桜と肉は普通。

佐藤: ラスト2句が

ジーンズの尻に夏服のリカちゃん
日焼けして猫耳カチューシャよく似合ふ

というのも、一句一句がダメというのではなくて、何を思ってこの肉、じゃなかった二句をラストにしているのか、というところです。

村越: あー、それは思いました。

谷: で、しかしだ。

上田: じゃ、ま、そろそろ存分にお話しいただいたということで、いいでしょうか。

村越: いいです!

谷: いいです!

村越: で、しかし、以降はいいんですか?笑

上田: それはラードでもなめながら

佐藤: おめかし終わりました!

谷: なんか、角川賞、予選する人大変そうですね。

村越: 僕が俳人だったら、予選はやりたくないです!恨まれそう。

上田: ぼくは超やりたいな>予選。角川俳句賞取ったら、やらせてもらえるのかしら。

えー、本日は、みなさまお疲れさまでした。ありがとうございました!

佐藤: はい!

谷: (が、しかしだ。の間違いであった。>で、しかしだ。)

村越: ありがとうございました。かなり、おもしろかったです!

上田: いや、たしかにおもしろかった。このブロックこの面子でやれて良かったです

2012-12-09

【落選展2012を読む】その3 楢山惠都

【落選展2012を読む】
その3 キリンの舌は青黒い

楢山惠都



空中の麒麟の舌や春の闇  藤尾ゆげ

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キリンの舌は青黒い。なぜなら、首が長すぎてチアノーゼだから。こんなに奇妙かつおそろしい話があるでしょうか。なぜそこまでして長い首に進化したのか。春の闇、も不穏な感じ。



引き返せ今引き返せと蟬の声  同

蝉が引き返せと言っていたことに気づくのは、蝉時雨の只中ではないだろう。引き返したくなった時点から遡ってそう感じる、と思う。


梟のまま瞬きす占い師  同

新宿の花園神社近くなどで占い師をみかけると、白い上っ張りに、白い四角い帽子をかむっている。あの神妙な様子は、言われて見れば梟のじっと動かない姿と似ている。

 

風花やときに押入より唄ふ  佐藤文香


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押入れって入ると案外ひんやりする場所だ。入る、というかよじのぼる。ふとんはたいてい押入れの上の段に仕舞われているから。ふとんを敷いているときしか入る機会が無い。子どもの時分は隙をみてよく遊んだ。

でもこのひとは風花という季語も旧仮名遣いも使いこなせる、大人なんだろう。それでもよじのぼる。簡単なことではありません、身体の話でなくて。合板であろう棚は大人ひとり分の重さによくたわむ。木の香りがする。外では雪がちらついているのだ、肌寒いから毛布をまとってみたり、腰が痛くないよう枕の位置をずらしたり。

閉め切られてほんとうに独りだから唄う。合板に声がひびいて少し安心する、いや安心しない。これは孤独の訓練だ。


ゆふがたといふかたまりと霜の鶴  同

その大人(または大人について逡巡すること)の孤独は、かたまりとしてあるらしい。冬の夕焼けは特に濃いバラ色をしている。雲を、建物を、道を染める。その夕方を、染みこむ液体でなく固体だと捉え直すこと。油断してはいけない。圧倒的な塊に圧迫されて凍てつく鶴、その孤独を思う。美しいりんかくである。


春の夕日は君の眉間を裏から突く  同

ときにその硬質は、寄り添うべきひとをも襲う。しかし、掲句と韻を踏んで、


古草やけものは君を嗅ぎあて笑む  同

しんなりとなじむ古草、体臭、のようにゆるむこともある。


ふきのたう愛の湿度のととのほる  同

川までのてのひらに雛あたたまり  同

かたまりをゆるめる愛には、春めいた温かさこそふさわしくあってほしい。

 

湯冷めして体の中にゐたりけり  生駒大祐

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わたしたちの内臓、血、骨は皮膚に包まれている。掲句の湯冷めは、皮膚と身体内部の温度にずれがあるような感覚だろうか。「ゐる」ことのふしぎさ。


神酒にあるつよきよはきや青嵐  同

北海道にいる宮司の友人は月に一度の直会を欠かさない。結局、皆を招いての宴会なのだけれど。

また、神奈川の神社で正月の助勤をしたとき。御祈祷を終えた方々に御神酒とお土産を授ける役目をしていたのだが、水色袴の若い宮司が盗み飲みするのですよね。神器に入ってるから銘柄は分からないんだけど、正月の清新さにあってとてもおいしいんだろうなと思いました。神社は暖房を使わないというのもあり。結局その場にいた十人くらいの男たちが飲酒した。

翌年から御神酒は厳重な監視下に置かれることになったそうです。すべての裏には人間がいるのです。


蝸牛まみどりを糞りつづくなり  同

きらきらしい詩語。

 

新しき靴に履き替え墓參かな  高井楚良



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お墓参りは清々しい。水をひしゃくで汲んで、乾いた墓石のてっぺんから流すのは、きもちいい。枯れた花、燃え尽きた線香を掃除する。靴を履き替えるところから清新さを保とうとするのは、故人への思いが強いからなのかな。


この島はウタに恵まれ踊りけり  同

田植唄世界の始めと思ひけり  同

ウタ、と表記するのは沖縄の歌謡という気がする。日本文化は南島を出発地とするのだという学説がある。文学の範囲を常民の暮らしぶりにまで広げた民俗学は、特にそれを言う。うたうことから始まったのだ。

 

流氷の上なる人に礼をなす  川奈正和

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船上からあたりを眺めていたら、流氷がやってきて、その上にひとがいたんだろうか。そして慌てて挨拶したのか。ほんとうだろうか。でも、すれ違う一瞬で目を合わせ、その瞬間に友だちになるようなことが世の中にはあると思う。その後二度と会わなくても。


劇いまだ劇中劇や花は葉に  同

例えばじぶんが劇作家だとして、劇中劇を書くときがいちばん愉しいんじゃないか。戯曲の骨組みから離れてドタバタやれそう。そして葉桜の季節の劇とは、それだけで面白そうです。

 

遥かなり三万人の春休み  大穂照久

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日本列島に一億三千万ほどのにんげんがいて、そのうち三万人ほどが春の決まった時期に、一斉に休暇をとる。そして移動する。もちろん移動しない一億人も存在するので、人口の密集にむらができる。そのくせこの小さな島全体の人口に変化は無いわけで、奇妙だ。天から地上を見下ろしてみれば、にんげんの営みはかくも奇妙だ。惑星のうわっつらでわらわら動くわたしたち。遥かなきもちがします。

掲句でもっとも奇妙なのは、遥かなりと嘆息する作者もにんげんのひとりである、ということ。宇宙からの巨きな視座と、じぶんの嘆息を聞き分けてしまうくらいの近さとが両立している。


遠い火事ぼくには口内炎がある  同

そして中間がすっぽり抜けている。近さと遠さしか無い。そのせいだろうか、ふたり集まると、ぼやける。


公園の落ち葉を散らすふたりかな  同

作者を含めたふたりなのか、作者がふたりを眺めているのか。


切手貼る愛を込めつつ貼る痛いか  同

じぶんと同じ近さを持つひとを探して、問いかけずにはいられない。手探りでなにか探すとき、痛覚以上に原始的で明確な指針があるのだろうか。

 

風船に歯を括りつけ抜きにけり  山下つばさ

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ぐらつく歯の裏を何度も舌で探る。もう歯を支えているのは針の先ほどの歯茎だけだ。その歯と歯茎を分離するときの、ぷつっとした痛み。


脱毛の手足を畳む木下闇  同

たぶん自宅で脱毛したんだろう。毛抜きを使ったか、脱毛クリームを塗ったかは分からないが、とにかくぷつっと痛いものである。身体を労って丸まっているようす。


耳朶を過ぎて落花となりにけり  同

耳をかすめて落ちていった花は、そのまま落花と呼ばれる。ぷつっとした瞬間が、やがて状態になるということ。

2012-11-04

2012落選展 21 川奈正和 掌上

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週刊俳句 第289号 2012-11-04
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2012落選展 
21 川奈正和 掌上 

白魚を食み暮らしたる魚に火を
流氷の上なる人に礼をなす
北窓を開きこの地に降りて来よ
遠山にとほき雨ふる沈丁花
謝肉祭にはあまりにも憂き仮面
あるほどの種蒔いてきし敵地かな
恋のあといちにち風の中の猫
酒豪あり荒野生まれの花衣
酒池肉林われ空杯に花受けて
絶滅種さながらに立て花吹雪
劇いまだ劇中劇や花は葉に
来しかたに紙の雪ふる昭和の日
牙ひとつ朔太郎忌の掌上に
好日やひとり麦笛鳴らずとも
父の日の父は主峰に真向かへり
おみやげは華氏温度計夏来たる
一里きて蛇踏むわれは一里塚
万緑のなかに一樹を植ゑてきし
人恋うて人喰蟻を抓みしか
青嵐衝いてきたりし君を嗅ぐ
しんがりをしかと歩める熱砂かな
砂の城遺してはるかなる泳者
潮騒をまねる道具を夏の果
少年の百戦錬磨花ユッカ
生身魂お菓子の家に生まれしと
血と汗と涙こぼるる露の秋
神殿に入る行列や天高し
口中の水澄みわたれ黙秘権
秒読みの声うつくしき秋の暮
胡桃割る廃仏毀釈とも違ふ
逢ひにゆく紅天狗茸ふところに
座布団を塔の如くにして待たれ
冬薔薇や遣欧少年のその後
初景色われさきに木を登りきて
恵方より来る一球をわが打法
雨ふれといへば雪ふる淑気かな
松のこと松にならへと手毬唄
満身に愛とかかれて初鏡
若菜摘み一夫多妻の如くにて
はてしなき雨の始まる七日かな
狼の毛もて書くべし立志伝
凱旋の靴音を待つ日向ぼこ
背番号見せあふことも愛の日に
眠らむか靴に仔猫を眠らせて
手旗から手旗へ伝へきたる東風
草摘みて天に到れり羽衣伝
亀鳴くや遅れに遅れきしわれに
ことごとく憂国の士や磯遊び
鳥雲にわれら倭国に入りたけれ
薔薇色の世をかへりみる薔薇の門