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2018-02-18

聖地巡礼 エックス山 牧岡真理

聖地巡礼 エックス山

牧岡真理


エックス山に行った。この山は東京の国分寺市にある雑木林で、その中の小道がX状に交差していたことから「エックス山」と呼ばれるようになったという。中央線の西国分寺駅で降りて、そこから10分ほど歩いた所にあった。



昨夏、福田若之の『自生地』を読んだとき、エックス山の存在を知った。句集にエックス山が登場するのだ。若之には、佐藤文香が編著した『天の川銀河発電所』の出版記念パーティで会った。ちょうど『自生地』を上梓したころで、うれしそうに自著を語っていた。



初読では、俳句をじっくり楽しみ、エックス山のくだりは飛ばして読んだ。いや実はエックス山のページをめくるのが怖かった。黒地に白抜きの文字列が、おどろおどろしい雰囲気をだしていたのだ。さらに老眼なので、光量不足の紙面はとても読み難かった。



エックス山に興味を持ったのは、暮に新宿で開かれた「冬銀河 DINNER  SHOW  2017」のステージだった。若之は、小田朋美のピアノに合わせて、エックス山メモランダムを朗読していた。著者本人の語りは、心に響く。このとき、エックス山は俳句界の新たな聖地になった。



年が明けて、炎環の Sara 句会がエックス山を吟行することを聞いて、参加させてもらった。聖地巡礼である。エックス山は、江戸時代の新田開発に伴ってつくられた雑木林で、現在は市が保有する西恋ケ窪緑地という公開された場所だった。

早春の雑木林を山と呼ぶ  鈴木陽子



エックス山は思ったほど広くはなかった。それでも市内最大の平地林だと説明板に書いてある。コナラ、クヌギ、エゴノキなどが植わっていて、木には番号がついていた。おそらくすべての樹木を管理しているのだろう。

建国記念日木の札に木の名前  中嶋憲武



雑木林は自然林ではない。農用や薪炭を目的に造成した人工林である。だから農業という目的を失い、人の手が入らなくなると荒地になる。エックス山では、昭和20~30年の管理方法に倣って木を育て、また伐採しているという。

愛し合ふこと残りたる雪を蹴る  宮本佳世乃



エックス山に『自生地』の表紙写真のような湿原があることを勝手に想像していたが、ため池もない、文字どおりの雑木林だった。エックス山は夢から現実になった。それでも聖地としての座はゆるがない。

聖地だしエックス山の狸のふん  牧岡真理



さて『自生地』の内容にはまったくふれずにきてしまったが、若之の自選句をひとつ紹介して終えたい。

言葉は葉かまきりはざわめきに棲む  福田若之


〔今週号の表紙〕第565号 しばらく 牧岡真理

〔今週号の表紙〕
第565号 しばらく

牧岡真理

知らない駅で待ち合わせをするときは、少し早めに着いて駅周辺をふらふらする。目的は居酒屋の下見である。

赤提燈を見つけて近づくと「暫く休業」の張り紙があった。初めての店だが、とても心配になる。どなたかが病気にでもなったのだろうか。

歌舞伎の暫はわくわくするが、店先の暫は悲しくなることが多い。再訪することがあれば、ぜひ暖簾をくぐり、売上に貢献したい。

撮影地:西恋ケ窪(東京都国分寺市)


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2017-07-16

〔今週号の表紙〕第534号 ウィンドウズ 牧岡真理

〔今週号の表紙〕
第534号 ウィンドウズ

牧岡真理



鎌倉の大仏に半世紀ぶりに再会した。小学校の遠足以来だがほとんど記憶がなく、感慨もない。もしかしたら当日欠席したのに友人らの思い出話が刷り込まれているのかもしれない。それならば初対面だ。はじめまして。

「胎内拝観入口」で20円の追加料金を払い大仏の内部へ侵入する。狭い階段を登ると金属で囲まれた小部屋に出た。2つの窓から光が差し込んでいる。ドーム型の天井は大仏の頭部で、パンチパーマの裏側が一つひとつ見える。2ダースほどの小学生が続々入ってきて外に押し出された。

撮影地:高徳院(神奈川県鎌倉市)




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2016-11-27

〔今週号の表紙〕第501号 錆 牧岡真理

〔今週号の表紙〕
第501号 錆

牧岡真理


マドロスが片足を乗せて煙草をくゆらすアレ。ビットとかボラードと言うらしい。錆がなんとも素敵!

この前ある美術展で錆びたトタン板を観たけど、錆を鑑賞するならやっぱ、屋外の天然物だね。

撮影地:西岬(千葉県館山市)


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2016-10-23

〔今週号の表紙〕第496号 鉄人の足 牧岡真理

〔今週号の表紙〕
第496号 鉄人の足

牧岡真理



京都のお気に入りスポットのひとつがこの壁だ。足から推測すると身長は3メートルぐらい、お友達サイズの鉄人が埋まっている。

ロボット好きとしては路地にたたずむ地蔵といった風情だが、信仰のまち京都といえども、この足に手を合わせる者はいない。

いや、誰にも構ってもらわないほうが良い。もし優しい人が寒かろうと毛布でも掛けたら、覗き込む輩がでてきそうな足である。


撮影地:四条烏丸(京都市下京区)


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2016-08-14

〔今週号の表紙〕第486号 海月 牧岡真理

〔今週号の表紙〕
第486号 海月

牧岡真理





あちこちに朝日に光る塊がある。潮が引いて浜に置き去りにされた海月だ。「ヤベ!」と思ったときには自力で海に戻れない状況にあった。ここがふたたび海の中になるには何時間も待たなければならないので、そのまま死んでしまう。

隣には別のヤベ君がいた。赤鱏だ。産卵のため浅瀬へ来て浜に打ち上げられてしまった。海に返してやろうと手をのばしたら釣り人に止められた。尾っぽの毒針にやられるという。顔をあげると松林の高い枝にいた鴉と目があった。

海月は風葬、赤鱏は鳥葬ということか。どちらもうらやましい。


撮影地:稲毛海浜公園(千葉県千葉市)


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