2025-12-28

村田 篠【2025年週俳のオススメ記事 4-6月】「いい俳句」とは

【2025年週俳のオススメ記事 4-6月】
「いい俳句」とは

村田 篠

4月最初の第937号の掲載記事は【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】の「交響詩ウルトラセブン」。「週刊俳句」を支えてくれている長寿の連載で、12月21日号の時点で残り581夜になっています。

第940号には小笠原鳥類さんの「鳩」第947号にも「ムクドリ収納」。詩のような、個性的な俳句鑑賞です。

第941号から岸田祐子さんの〔ビール俳句〕シリーズが始まりました。さまざまにビールを詠んだ句から発想されるビールについてのあれこれ。ビールの種類や産地、温度、注ぎ方など、今すぐビールが飲みたくなること必至のエッセイ。ビールが夏の季語なのは、日本では冷やして飲むのがデフォルト、だからなのですね。

第944号には小野裕三さんの「haikuを愛する元・EU大統領 ファンロンパイ氏に通訳同行して」。ファンロンパイ氏が在日中に参加した御宿での句会のレポートです。海外の俳人が俳句のどこに惹かれるのか、選句の基準は何なのか。興味深いレポートでした。

句会の最後に、彼は自身の俳句観について語った。俳句の特徴として彼が以前から強調しているのは、自然などを観察して描くことで、意識の力点(attention)を自分ではなく自分の外に向けること。それは自分のエゴみたいなものに囚われない心を作る、と彼は力説する。

第949号には上田信治さんの「龍太はなぜ、それを言ってくれないのか」。飯田龍太が自分の俳句観を「無名」という呼び名で表すことについての考察です。

龍太の(おそらく、もっとも有名な)殺し文句に「詩は無名がいい」がある〔2〕。

名句を説明しないことと「無名」を価値とすることは、彼の中で絡まりあって一つの俳句観を成しているように思われる。〔3〕

***
「いい俳句」とは何か。飯田龍太にそう聞けば、間違いなく適当にはぐらかされるだろう。

それが「俳句は自得の文芸」ということなのかもしれないが、今日、それを言わないこと、それを秘教化することは、長く続く俳句の無方向的(アノミー)状況の追認であり、それは逆に偏狭なエリート主義ですらある。

【句集を読む】には、鈴木茂雄さんから第945号に「金子敦の第七句集『ポケットの底』を読む」、第946号に「野間幸恵『ステンレス戦車』再読」、第947号に「豊かな詩的宇宙 野間幸恵句集『WOMAN』」、948号に「断片とイメージ 野間幸恵句集『WATER WAX』」、上田信治さんから第947号に「俳句の中で「自由」 黒岩徳将『渦』」をご寄稿いただきました。

10句作品は、おおにしなおさん、超文学宣言さん、竹岡佐緒理さん、上田信治さん、ミテイナリコさん、彌榮裕樹さんからいただきました。作品へのリンクは「週刊俳句2025年アンソロジー 12名12句」をご覧ください。

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