2018-12-30

【2018週俳のオススメ記事 10-12月】どれをとっても 上田信治

相子智恵【2018年週俳のオススメ記事 10-12月】
どれをとっても

上田信治

第598号の10句作品はなつはづきさん「そのひとは自転車で来る豊の秋」。山口昭男さんの「読売文学賞」受賞を祝う会レポート「師系、その先へ──爽波・裕明から受け継がれているもの」、西澤みず季さんの「角川俳句賞とその時代〔前編〕」と読み物も充実。

599号、10句作品は市川綿帽子さん「点滅のネオンと語る秋の雨」。好評シリーズ「10の質問」は、金井真紀さん。前号と今号、西原天気さん堀下翔さんによる、岡田一実句集『記憶における沼とその他の在処』の句集評が出ています。「海を浮く破墨の島や梅実る」の「を」についての、堀下さんの考察は話題を呼びました。

600号は記念号です。 丸田洋渡、樫本由貴、なかはられいこ、浅川芳直、中嶋憲武、小津夜景、小池康生、浅沼璞、黒岩徳将、宮本佳世乃、今井聖、小久保佳世子、岸本尚毅、小澤實、佐藤文香、西原天気の各氏の600号にお寄せいただいた小文。壮観です。そして「週俳600号記念企画■多摩川」。西村麒麟✕福田若之の二人が、多摩川の河原でビールを飲みながら、平井照敏編『現代の俳句』(講談社学術文庫)について、だらだら語るのですが、これが、まあ、おもしろい。止まらなくなります。

601号は、新しく「いぶき」を創刊した、今井 豊さんと、中岡毅雄さんによる10句作品が読みどころ。「丹波栗鳥獣戯画に拾ひけり」(今井 豊)、「底紅や昼からともる洋燈館」(中岡毅雄)。橋本 直さんの「ふかの湯ざらし」は、歳時記のなかの鱶についての随想(と呼ぶにふさわしい好エッセイ) 。

602号は「2018角川俳句賞落選展」。参加12作句品のうち、4作が一次予選通過作。伝説の俳人である寺澤一雄さんのまさかの登場、青本柚紀さんの意欲作もあり、盛り上がりました。今年は、週俳とも縁浅からぬ鈴木牛後さんが受賞され、同賞を争った(というか、嚙ませ犬的に花を添えた)上田が、受賞作「牛の朱夏」の鑑賞記事を書いています。

603号は、関悦史さん「BLな俳句 」、橋本直さん「俳句の自然 子規への遡行」のシリーズ連載2本が中心の平穏な号。「この世界には、行動派の猫と、観察派の猫とが、存在します。」(小津夜景さん「今週の表紙」)

604号。岡田一実さんによる「2018角川俳句賞「落選展」を読む 」の連載第1回「「おのづから」という観念的発見を導入部に用いたことで「桜」も満ちてくるような時空の余裕を感じる」(「おのづから時の満ち来る桜かな」(ハードエッジ)についての評」。鴇田智哉さんの【週俳10月の俳句を読む】虫時雨この横顔で会いに行く」(なつはづき)評も、ぜひご一読を。

605号 。10句作品は中田美子さん、大塚凱さん。「菊花展同じ動作を繰り返し」(中田美子)、「鮪の眼曇りながらに雲まだら」(大塚凱)。岡田さんの「落選展を読む」2回目に加え、藤田哲史さん「「第64回角川俳句賞」候補作品 雑誌掲載作6作品を読む」。藤田さんの抜井諒一さんの作品についてのコメントが、自分は、平成俳句のトレンドのクリティカルポイントをヒットしていると感じました。

606号。岡田さんの「落選展を読む」3回目。「「みな」という措辞でそう言い切ることで名だたる「力士」が桃色に集う様子が迫力を伴って見えてくる」(「力士みな大阪にゐる涅槃西風」(寺澤一雄)評)。名だたる力士が桃色に集う、って最高じゃないですか? 上田のひさびさの「成分表」は「国産ワイン」について。

607号【週俳11月の俳句を読む】の橋本小たかさんは、大塚凱さん中田美子さんの作品を、虚子編『新歳時記』の句と比べ読みしていて、これは面白い試み。瀬戸正洋さんの全句評とも、比べ読みたい。

608号、10句作品は花谷 清さん「ふれば鳴るけれど団栗もう振らない」。609号は、樋口由紀子さん、浅沼 璞さん、相子智恵さん。樋口さんの、七七だけで構成された一連より「どんどん増える清潔な靴」。「手も足もでない夜空の布団かな」(浅沼 璞)、「飛行機も車も喋り絵本冬」(相子智恵)。

どれをとっても、おもしろく、今年も、お世話になりました。

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