【2022年週俳のオススメ記事 7-9月】
読む、読み返す、読み直す
村田 篠
毎年そうですが、今年の夏はひときわ暑かったような気がします。自粛ムードが薄れ、夏休みはどこへ行っても賑わっていました。私も久しぶりに姫路以外の場所へ旅行しましたし、そういえば、人生で初めて蜂に刺されたのも今年の夏でした。
『週刊俳句』の7月は第793号、第794号、第795号に鈴木茂雄+野間幸恵「りん句る100」を掲載。「りん句るに沼る」によると、〈りん句〉は「575 であること、前の人の作品から文字を使用すること、同音異語は可、末尾の文字でなくても可」という決めごとのなかで俳句を繋いでゆくことから名付けられた俳句の連作。「言葉の万華鏡のように」したいという希望で始まった連作は1500句にものぼっているとか。読んでいると楽しさが伝播してきて、自分でもやってみたくなります。
第796号は、上田信治「「ナンセンスの練習」7句・自句自解」。俳句を始めたばかりのころ、「自句自解はするものではない」と結社の先輩方によく言われました。野暮なこと、という暗黙の了解があったのかもしれないけれど、最近は作家の「自句自解本」がしばしば発売され、それを読む楽しみも増えてきました。俳句の「読み筋」を自分で解説している上田信治の本文を読むほどに、ここまで自分の句の読み筋を明解に書くことが自分にできるだろうか、そこまで考えて俳句を作っていないんじゃあないか思ってしまいました。こうやって自分の俳句を読み返すことはなかなかしませんが、大切なことかもしれません。なお、同号「【2021落選展を読む 1】(パズルのように)関係づける」も上田信治。
また、7月8月は以下の通り【句集を読む】をご寄稿いただきました。第796号に竹岡一郎「これが光、これが春 北大路翼句集『見えない傷』を読む」、第797号に寺沢かの「言葉の持つ韻律やイメージでできた穴(言葉のシルエット)を、そこにある事象がぴたっとフィットして通過し、楓子さんに取り込まれる瞬間 小川楓子句集『ことり』を読む」、第798号に鈴木茂雄「野間幸恵の読み方 句集『ステンレス戦車』」。ありがとうございます。なお【句集を読む】は随時ご寄稿を受け付けています。
9月に入り、第805号の「特集 「女性」と俳句」。現代のジェンダー観に照らして久女を再評価した岡田一実の現代俳句評論賞受賞作「『杉田久女句集』を読む――ガイノクリティックスの視点から」を全文掲載、そして久女門下の宮本正子を論じた松本てふこ「久女主宰誌「花衣」所属・宮本正子という俳人 まぼろしの女友達へ」、さらには小林苑を「岡田一実評論を読む ガイノクリティックスってなんだろう」をご寄稿いただきました。「ガイノクリティックス」というのは女性の立場から女性の作品を批評することで、今回初めて知った言葉でした。批評がおもに男性の立場からなされてきたことによって「女性であること」がかつての女性俳人の句業に影を落としてきたことを正しく知り、再評価してゆくことは、今後も続けてゆく必要があろうと思います。
不定期連載の【空へゆく階段】は第793号、第799号、第802号、第803号に。また、以下の通り10句作品を掲載させていただきました。
■森賀まり 虹 彩 10句 ≫読む (第793号)■杉原祐之 マニラ 10句 ≫読む (第795号)
■広渡敬雄 天草 10句 ≫読む 第801号)
■野口る理 タイガーモノローグ 40句 ≫読む (第805号)
ご寄稿下さったみなさま、ありがとうございました。
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