「週俳の2009年」回顧
〔4〕十月~十二月:第128号~第139号 ……山口優夢
129号では三宅やよいさんが「居心地の悪い身体」と題して柴田千晶さんの近刊句集『赤き毛皮』の鑑賞を寄せてくださっています。また、本誌とは離れますが、豈weekly64号には高山れおなさんが「ミヤコ・ホテルでつかまえて 柴田千晶句集『赤き毛皮』を読む」を執筆しており、合わせて読むと、女性の視点、男性の視点がそれぞれ見えてきて面白いかと思います。
同129号に猫髭さんの「『評伝 頂上の石鼎』を読む」、「俳句関連書を読む」シリーズが久々に登場。その後、週俳誌上では、133号「真っ赤な嘘をつく 鷹羽狩行『俳句の秘法』」(猫髭)、134号「虚子の未来・俳句の未来 「特集 高浜虚子・没後50年~虚子に未来はあるか」(『国文学 解釈と鑑賞』2009年11月)」(久留島元)、同号「正直すごくおもしろいつぶやき せきしろ/又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』」(山田露結)と「俳句関連書を読む」シリーズがしばらく続きました。
太田うさぎさんの2009年度豆の木賞・第5位作品『泥棒 ピーターとオードリー』が掲載されたのは130号でした。
131号は週刊俳句の恒例行事となった感もあります、角川俳句賞の「落選展」でした。今年は18人22作品のご参加と、これまでで最大規模となりました。ありがとうございました。個々の作品に対しては読者の方々より様々な評をコメントにお寄せいただきました。こちらも本当にありがとうございました。また、これも毎年議論になるところですが、角川俳句賞の選考については132号で五十嵐秀彦さんが「「新しい才能の発掘」という看板」と題して言及してくださっています。
現代俳句協会青年部の勉強会もレポートさせていただきました。132号には山口が「写生 「超える」ための方法」と題して114回勉強会(「写生について」)を、138号、139号にはさいばらが「幸せになれるって保証も約束もないんですよね(前)(後)」と題して115回勉強会(「俳人とインターネット」)をそれぞれ書かせていただいています。特に「俳人とインターネット」では週俳編集者の一人である上田が俳人とインターネットのかかわりの一例として本誌を紹介させていただきました。
「今年は金子兜太の年だった」(さいばら天気)という意見もありますが、その金子兜太氏を軸にして「前衛俳句」の評価について考える論考「前衛俳句のありどころ」(堀本吟)を抄出転載させていただきました。上巻「金子兜太と河原枇杷男~正岡子規国際俳句賞の意味」は134号に、下巻「金子兜太と林田紀音夫~「伝統」対「反伝統」の空無化」は135号に掲載されています。
また、金子氏が主宰されている「海程」の秩父俳句道場参加レポートを山口が2回にわたって(135 号「兜太の秩父へ」、136号「「思い」は「肉」に、「肉」は「思い」に」)レポートさせていただきました。丁度、堀本氏の論考掲載と同時期の掲載でした。
創刊したばかりの雑誌「塵風」の創刊号より、斉田仁さんのエッセイ「気ままな忠治」を4回にわたって(136号「関東無宿」、137号「一茶と忠治」、138号「世に拗ねて」、139号「旅の終わり」)転載させていただきました。
12月になると、先日、12月5日に刊行されました久しぶりの若手アンソロジー句集「新撰21」に関連した記事も出てきました。まずは、「新撰21」出版にさきがけて「俳句未来人は」という特集を組んだ「豈」49号に言及したさいばらの記事「ピリオドの描き方」が137号に掲載されました。刊行後、アンソロジーに収録された21人の若手作家の1句鑑賞を行なう企画が立ち上がり(たとえば「谷雄介の一句 含羞と屈託の果てに」さいばら天気、など)、現在進行形で進んでいるところです。
年末になると今年一年を回顧する記事。138号「今年最も注目された俳人は?『俳壇』2009年12月号を読む」、139号「今年最も感銘を集めた句集は?『俳壇』2009年12月号を読む」(ともにさいばら天気)は、「俳壇」誌の行なったアンケート結果を集計した結果、今年最も注目を集めた俳人は「金子兜太」で感銘を集めた句集は「日常」(金子兜太)であることを示しました。上記の「金子兜太の年」発言は、これらの結果を受けてのものです。
なお、週刊俳句史上最長を誇る連載企画「林田紀音夫全句集拾読」(野口裕)は139号の時点で97回目を迎えています。100回までもうすぐ。
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